四十三 影と陰
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あるテマリ本人もまた、なかなかの分析力で戦略を練っていた。
天を仰ぐ。除々だが着々と低くなる太陽。陽が落ちてくると影は長くなる。また障害物や遮蔽物が多ければ多いほど影も増える。持久戦は不利だ。
(…という事はチンタラやってると会場中の影が拡がって奴のテリトリーが増えていく)
口元に親指を寄せる。意外と負けん気の強いテマリは確実に勝利を掴むため、大技を繰り出した。
「―――ならば、障害物を全て取り除くまで!」
指の皮を噛み切る。ぷつりと浮かんだ血の玉を扇に一線。直後、振り被る。
「【口寄せ・斬り斬り舞】!!」
風と共に現れた口寄せ動物――鼬『カマタリ』。テマリの風攻撃に相俟って攻撃範囲が広大となる。テマリを中心として荒れ狂う狂風は会場中の遮蔽物を斬り裂き始めた。
会場全体に押し寄せる土煙。木々が大きく軋み、風の金切り声が枝葉をもぎ取った。大声で喚き散らす突風に観客が悲鳴を上げる。
突如、風が止んだ。
「なんだ?…っ、」
攻撃の手を休めていないテマリが声を上げる。驚愕が滲む言葉を遮って、鋭い風が彼女の頬を掠めた。血が一筋流れる。
滴る血をそのままに、テマリは視界を覆う土煙を睨み据えた。徐々に煙が晴れるのと共に大きく眼を見開く。
鋭い風の攻撃を放ったのは、彼女の口寄せ動物であるはずの鼬であった。
「か、カマタリの影を…!?何時の間に!?」
「無闇に俺の領域を増やすもんじゃないぜ」
シカマルの発言に、テマリは素早く地面を見下ろした。自分の攻撃により折れた枝葉があちこちに落ちている。
風が起こす砂煙で視界が覆われた瞬間、シカマルは術を発動させた。強風により舞い上がり対戦場の至る所に散漫した枝葉の影を伝い、更に影を伸ばす。それらの影と己の影を次々とくっつけ、カマタリの影と繋げる。
そしてシカマルは、対戦相手から遠く離れた場所にいながら、テマリの口寄せ動物を自分の駒にした。
【影真似の術】でカマタリを思うがままに動かす術者本人は、大木の陰に潜んでいるのか見当たらない。だがテマリはそんな事を気に掛ける余裕も無かった。味方であるはずの口寄せ動物に攻撃され、困惑する。防戦一方。
戸惑い、口寄せの術を解くのすら考えつかない。再びカマタリが一陣の風を放った。咄嗟に扇を身構えるが、弾かれる。
「チッ」
得物を遠くに飛ばされ、テマリはすぐさま対戦場を見渡した。その目線の先が背後の壁で留まる。
試合開始の際、先制攻撃を仕掛けたテマリを避けるため、シカマルが用いた二本のクナイ。壁に突き刺さったままのその内の一本を引っこ抜く。途端、カマタリの攻撃が彼女に襲い掛かった。
「くッ…舐めるんじゃない!」
視界の端で身じろぐ気配を捉え、人影目掛けてクナイを放つ。突然向
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