第八話 幼児期G
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向に突き進んでいる」
「それでね、どうせならお兄ちゃんもお母さんもすごいって言ってくれるような、さらなる髪型を私は考えたんだ!」
「これはもう俺が謝ればいいのか。もはや土下座しろってことなのか」
「いくよ、ボリュームヘアーのバリエーション! これがわたしの全力全壊!!」
現実逃避しかけていた俺の前で、妹からなにやらオーラのようなものが身体から溢れていた。立ち込める熱と威圧感、アリシアの金色の髪がうねりをあげ、勢いよく逆巻いている。なにこれ。
どうしよう、展開にまったくついていけない。いや、もう正直置いていってほしい。なんで妹の目がキュピーンって感じに光ってるの。あ、今「ボッ」という音と共にアリシアの髪が天井を突き抜けた。
わぁ、あれはもう立派な武器だ。硬質とか破壊力とかが半端ねぇよ。これは……ユニコーン……ゲイボルグか、いや―――ロンギヌスだ!
妹の全力全壊を見届けた俺は、静かに目を伏せる。おかしいな、瞼の奥が熱いや。俺のキャパシティを超えた出来事が連続して起こった気がする。というより起こってはいけない何かが起こってしまった気がする。
あぁそうだ、叫ぼう。もやもやしたものを溜めたら身体に悪いよね。うん、そうしよう。さっそく俺は大きく息を吸い込み、我武者羅に声をあげることにしました。
「…………おかあさぁあああぁぁん!!! アリシアがァァーー! アリシアさんにィィイイィーーー!!!」
めっちゃくちゃ取り乱した俺は、きっと悪くないと思う。
******
「という夢を見た」
『……うわぁ』
うん、俺もうわぁ、しか言えなかった。もはや、なんだこれとしか思えなかった。これが夢だとわかった時の安堵感は計り知れないものだったよ。
「……悪夢だった」
『ますたーが、本当に落ち込んでいる』
ふふふ、今ほど俺の想像力に涙したことはなかったよ。髪だけだったのはなによりもの救いだった。あれでもし肉体も変化していたら、俺もう駄目だったかもしれない。ムキムキの妹。僕、ウマ子との接し方なんてわからないよ。
お昼寝の時間だったため、いつも通り眠っていたら突如起こった悲劇。まじで泣きながらうなされていたらしい。コーラルも軽く引くぐらいの勢いだったようだ。素晴らしい頭突きで起こしてくれたので、感謝の言葉を伝えながら、俺も勢いよく放り投げさせてもらったよ。もちつもたれつ。
「だめだ、完璧に目が覚めた」
いそいそとお昼寝用の布団から出る。ベランダから差し込む太陽の光に温かさを感じながら、大きく背伸びをする。リビングに布団を敷いて寝るのが、俺たちの毎日の日課である。さすがに幼児にはお昼寝は必須項目だからね。放浪するのは大抵午前中か、お昼寝後の午
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