不器用な言葉
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方向を見て言う。
「見ていられなくなったのだと思います。ヴォルちゃんは……詳しくは知りませんが、今までの人生をずっとモンスター達と戦いながら生きてきたのです」
「……」
「そんな人生を歩む中で、人と触れ合うことなく生きてきたんだと思うんです。ですから多分、人狼なんて呼ばれるようになったのだと……」
「人狼!? アイツが!?」
正太郎が目を見開いて叫んだ。
「ヴォルちゃんは弱気になって絶望して、死んだ人を多く見てきたんだと思います。だから見てられなくなって、せめて憎しみで正太郎さんを絶望から解き放とうと、あんな事をしたのでしょうね〜」
乱暴過ぎますけど〜、と夏空がそんなヴォルフの不器用な気遣いを締めくくった。
「そうなんだ。お姉ちゃん、よく気付けたね? 私、怖くてそんな事考えられなかった」
「あらあら、ヴォルちゃんはああ見えて優しい子なんですよ。神無ちゃんもまだまだです〜」
自分自身の至らなさに不満な神無と、そんな神無を夏空は彼女の頭を撫でながらからかうことでその意識をそらす。
「もう。お姉ちゃん、普段ぽやぽやなのにこういう時だけはやけに的確なんだから……」
「お姉ちゃんですから」
逃げようとする神無だが、夏空の手は神無の逃げる先を知っているように神無の頭を撫で続ける。
「おっしゃあ! なんかやる気出てきたゼ!」
と、先程まで黙っていた正太郎が地面を大きく踏み鳴らしながら叫ぶ。
「あ、あら? 正太郎さん?」
「ありがとうよ夏空さん。俺はもう少しでアイツを恨んでいた所だった。だが、これからは違う。俺はアイツに追いついてみせるゼ! 見てろよ好敵手!」
「そ、そう? 良かったね正太郎さん」
妙なテンションが爆発している正太郎を、神無は引きながらも言った。
「そうと決まりゃあ特訓だ! だが、何をすれば良い? どうすりゃ俺は強くなれる!?」
正太郎は頭を抱えつつ晴天の空を見上げ、問いを投げかける。
農場の人々がそれぞれの作業に移って行く。また正太郎が暴走を始めた事が分かったのだろう。
そうして夏空と神無に見守られている中で天を仰ぎ始めたところで……
「分かったァ! アイツに剣を教われば早く強くなれる筈だ! うおおおおおおおおおおおお! ヴォルフ! 俺を強くしてくれええええええ!」
と、答えを見つけたのか、全速力で農場を走り去っていった。
「良いのかな。あれ?」
「た、多分大丈夫だと……」
盛大にドン引きした神無と夏空が、もう見えなくなった正太郎の去った方向をみて呟くように言った。
「成る程……その手があった。正太郎如きに出し抜かれるとは不覚ね」
不意に沸いて出たかのように小冬がその姿を現して呟いた。
「私も教わろう」
小冬はそう言いつつ正太郎の去った方向へと歩き始め
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