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人狼と雷狼竜
不器用な言葉
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いるのか?」
「ったりまえだ。弱くて門番なんざ勤まるかよ。ああ分かってたさ! 俺ぁ弱ぇよ! 狩りにだって怖くて行けねえよ! だけど俺は生まれ育ったこの村が好きなんだ。だからせめて門番にもなって村を守りたかった! 口だけでも自分を少しでも強く保ちたかったよ!」
 ヴォルフは黙って彼の言葉を聴き続ける。
「けど、それももう終わりだ。お前みたいなバケモンが来たなら、俺なんかいなくても村は平和だろうさ。俺に意味なんて無ぇ! だから、俺にもう構うんじゃねえよ!」
 正太郎はそう吐き捨てると共にヴォルフに背を向けて歩き始め――――――
「そうか。なら、時間の無駄だったな」
 気が付いた時には顔から地面に叩き付けられていた。
「ヴォル君!?」
『!?』
 神無や農場の人々が突然の事態に声を上げるが、ヴォルフは構わずに右手に握った正太郎の頭を地面に押し付け続ける。
「そうだな。お前の言うとおり、意味の無い者などいるだけ無駄だ。自害する気も無いのなら、止めを刺してやろう」
 言葉と共に更に力が込められて指が頭に喰い込まんばかりに握り締められ、額が更に地面に押し付けられる。このままでは頭蓋骨骨折で死に至るだろう。
「が!? ぁぁぁぁっ!? あああああああああああ!?」
 正太郎は必死になってもがいた。死にたくなかった。今まで惨めな思いをひた隠しにして自分すらも誤魔化して生きてきたというのに、この仕打ちは何だ? 一体何が自分をここまで不幸にするのだ?
「ふッッッざ……けんな! ふざけんじゃね……ぇぞ! この、クソヤロウ!」
 だから叫ぶ。あらん限りの憎しみを持って! あらん限りの力を尽くして! この暴挙を犯す男にせめて一矢報いる為に!
「それで良い」
 静かな言葉と共に身体が大きく引っ張られ、頭の拘束が抜けた感覚と共に宙を舞うような不思議な感覚が正太郎を襲う。
「へ?」
 そんな間の抜けた声を上げた直後、激痛と共に背中を土が擦る音が聞こえた。
「ぐぎゃ!?」
 正太郎は未だに激痛が走る頭を抑えつつ立ち上がると、こちらを見ているヴォルフを見据えた。
「てめえ! 一体何を……」
「俺が憎いか? なら俺を倒せ。倒せないのなら、自身に誇れるお前になれ」
 そう言ってヴォルフは正太郎に背を向ける。
「そんなお前自身になってみろ」
 ヴォルフはそう言って去って行った。その光景を、正太郎を含めた全員が唖然と見詰めていた。
「何だよアイツ。訳わかんねえ……」
「……励ましてくれたんだと思いますよ〜」
 呆然とヴォルフの背中を見送っていた正太郎に、いつのまにか現れた夏空が話しかける。
「え? どういうことなのお姉ちゃん?」
「夏空さん……なんでアイツが俺を励ますんで?」
 正太郎と神無の言葉に、夏空はもう見えなくなったヴォルフの去った
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