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人狼と雷狼竜
不器用な言葉
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釜戸をその人の為にって加工屋のお爺ちゃんが造っちゃったんだよ。ケーキ作りの為の専用の釜戸をね」
 それは大したものだな。
「お爺ちゃんは昔外に出てた時に食べた事があったみたいでね。その為だけ張り切って造ったの。村の皆も職人さんも感激してた。追加の材料も村の外からも頑張って揃えてね。最後は大きなケーキを村の皆で食べたんだ。本当に美味しかったなぁ」
 神無の目が遠い。当時の事を思い出しているのだろう。
「あの時は小冬もお姉ちゃんも大騒ぎでね。欲張った小冬が一番食べてた気がする」
 まぁ、アイツらしいな。
「職人さんはその後暫く居たんだけど、やっぱり帰って行っちゃった。でもね――――」
 神無が言葉を一度止めた。
「職人さんはまた来るって言ってた。今度来るときは自分の弟子を連れて来るか、それとも引っ越して来るかもって言ってた。ホントにそうなるかどうかは分からないけどね」
 そう、神無は楽しそうに語った。例え職人やその弟子が戻ってこなくても、神無はその思い出を大切にしているように見えた。
「……」
 俺はそれに何て答えてやれば良いのか分からず、黙して団子を食べていた。
「お〜い!」
 遠くから声が聞こえた。聞き覚えの無い女の声だ。
 声の方向からは、皮製の戦闘服を着た見知らぬ女がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。
「朱美さん! ヴォル君。あの人がヴォル君を運んでくれたんだよ」
 む、知らぬ内に貸し作っていたか。何にせよ助けられたことには感謝しよう。
「やあ。キミがヴォルフ・ストラディスタだね? 本当に目を覚ましているとはタフな男だね」
「アンタには助けられたようだな。感謝する。何れ何処かで恩を返そう」
 俺の言葉に朱美という女は少しびっくりしたようだ。
「オイオイ。そんな事イチイチ気にしなさんな。あとこれ、キミの肉焼き道具」
 彼女はそう言って、俺の肉焼きセットが入っているらしい革袋を差し出してくる。
 受け取って中身を確認する。ご丁寧に綺麗に洗ってある。
「何から何まで悪いな」
「ん? ああ、洗ったのはアタシじゃない。椿と梓だ。昨日、信号弾のせいでジンオウガと戦闘に入ったのを理解してたみたいでね。君を運んだ後にアタシが回収してきたのを見て、洗わせてくれと言ってきたんだ。少しでも詫びて置きたかったんだろうね」
 ……ああ、あの二人か。あの時、火を土で消したときは無礼な奴だとは思ったが、そうでもなかったようだな。あの時は俺も悪かったが。
「一応言っておくけど、焼きかけの肉と残ったガーグァは無理だったからね。昨夜のうちに消えてたよ」
「あの辺りにはメラルーがいた。器具が残っていただけでも僥倖だ」
 肉焼きセットが入った袋を地面に置、茶を飲む。む、この苦味と渋味が何とも言えん美味さがある。この団子甘味と実に合う。
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