第十話 依頼内容
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食いだめ出来るとはまるで食技だな。便利なもんだ。
俺以外にも皆マスターの話に聴き入っていたようでこちらに注目していた。
そしてマスターの説明から流れるように自然に引き継ぐ形でヨハネスが続きを説明する。
「その象熊ですが普通の象熊とは違う個体を狩っていただきたいのです。IGOの調べによりますとここ十数年その地で象熊の活動は確認されていませんでした。つまり――」
「通常の個体種よりも休眠期間が長い。故にその分一度に食す動植物は通常のソレの比じゃないってわけね。そしてそこから導き出される答えは――より強く凶暴な象熊」
今までのむさ苦しい男性声ではなく透き通るような綺麗な声がこの場に響く。
「さすがエイダさん。その通りです」
あれ?ヨハネスさんとあの麗しき美女は知り合いなのか。それともエイダさんがそれだけ有名なのか。いや有名なら参加出来ないみたいだしなぁ……もしかして。
「あの二人、でぇきてぇるぅ?」
「お前さんは中学生か。エイダはライデンと一緒で最近有名になってきたんだよ。俺からヨハネスに確認した時もエイダは参加OKって言ってたしな……まぁそれだけじゃなさそうだが」
なるへそ。まだ俺にも希望はあるってことか!それだけ分かれば万事OK。
俺とマスターの小声雑談をしている間に説明はどんどん先に進む。
そこでまたも耐えられなくなったのか先程のブルボと呼ばれた人物が再度質問を投げかけていた。
「それだけの大物を新人に狩らせるとか正気かよ。熟練の美食屋ですら手を出せねぇ奴もいるくらい象熊は凶暴なんだぜ!?」
「ならば辞退していただいても構いません」
「うっ……。そ、そうだっ! 報酬はどうなってやがんだ。流石にこれだけの大物だ。報酬はたんまり頂かねぇと割に合わねぇぜ!」
彼の丸テーブルを壊してしまいそうな程強く叩きながらの主張は正しいと思う。それに俺も聞きたいことがある。葉巻に火を点けカウンターに肘を掛けながら問いかける。
「報酬もだけど、狩り場だよね。どこで狩るの?」
俺がブルボって人に続いて質問すると俯き加減でいたヨハネスさんのサングラスが一瞬光を帯びた気がする。電球による光りの反射だと思うがそれと同時にどことなく迫力が滲み出ている。
ヨハネスさんは一呼吸おいた後もう一度サングラスを中指でゆっくりと整えるように押し上げた。しかし先程とは違いレンズ越しから見える彼の眼光は鋭かった。それも息を飲んでしまうほどの。
「ロッグ鉱山。そこのロッグ山脈を超えた先にあるバタリアン緑地にその象熊は生息しています―――報酬額は三十億」
「さ、三十億……」
「バ、バタリアン緑地」
誰かのゴクリという欲の混じった唾音と恐怖からくる震えた声が同時に聞こえて
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