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或る皇国将校の回想録
第一部北領戦役
序 動乱の兆し
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【第一部北領戦役】
経済的な行き詰まりが続けど〈帝国〉の力は経済、軍事、兵力において圧倒的であり、
周辺国家の抵抗は〈帝国〉による世界秩序の構築を脅かすには不足であると、知識人には国籍や主義の別無く思われている。
西部最大の勢力を築き上げ独立を果たした凱帝国は、自身の領域を守るだけで精一杯。
西南部勢力のアスローン大王国も強硬な抵抗により国体を護持しているのみ。
北方・東方は未だに部族の割拠を続けており、インテリゲンチャらには評するに値しない物として扱われている。
であるならば東南にある我らが〈皇国〉はどうか?
そこに住まう我々も所謂文明人を自称する者にとってはただの蛮族に他ならない。
小器用な蛮族が船に乗り吾らの生計を脅かすのであれば、これは戦争ではなくただの蛮族鎮定である、と彼らは嘯く。
であるならば、悪足掻きと笑われようと前進し、一つの時代を終わらせなければならない。
帝国秩序を揺るがすことができればこの世界が再び我らに開かれるのは明白な運命であろうから。
――皇土解放連盟会報「〈帝国〉という秩序の是非」より抜粋
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