第4章 聖痕
第38話 邪神顕現
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のみ!
喘ぐようにして大気を貪る邪神。その一瞬後には、肘から先を全て失って仕舞った邪神の三本の右腕の赤黒いうじゃけたような断面が、俺の見ている目の前で、徐々に盛り上がって行くのが判る。
そして、その傷痕から止めどなく溢れて来る異常な臭気を発生させている体液が、地上に有る草木や、建物の残骸。いや、大地そのものを穢し続けている事も。
……いや、それだけではない。ヤツは、明らかに穢し続けている周囲から大量の気を吸い上げている。
そう。ヤツが動く度に初夏の勢いを感じさせていた草木が冬の様相を呈し、大地から精気が奪われているのが感じられたのだ。
これは、正に気が枯れる状態。つまり、気枯れに通じる。
右腕全てを一時的に失った牛角の邪神が、怒りの咆哮を上げた。
ややバランスを欠いた仕草だが、しかし、それでも尚、俺とタバサを得ようと無事な方の三本の左腕を突き出そうとして来る邪神。
いや。目的はそれだけではない。おそらく、ヤツも気付いている。俺を得たらヤツの能力が跳ね上がる事を。
俺は陽に属する木行の神獣。ヤツは、この現世には存在しない陰火に属する邪神。
木生火。この定めに従い、俺を得た陰火の邪神は更なる力を手に入れる可能性が高い。
しかし、その左腕に巻きつく何者か!
そう、それは水龍。鎌首を擡げ、火行の邪神の行動を阻害する水で出来た龍。
濛々と発生する水蒸気を物ともせず、その水龍が邪神の左側頭部に対して、水流を放つ。
小爆発に等しい水蒸気の発生を左側頭部に受けながらも、しかし、未だ前進を続ける邪神の三本の左腕。
シテ河の水より、ウィンディーネが造り出した水龍により一度は動きを鈍らせた邪神だが、現在は火侮水の状態。完全に勢いを消す事は出来ないっ!
しかし、もう一体の水龍が、今度は俺の後方から接近し、邪神の前進しつつ有った左腕を絡め取る。
これは――――――――。この地を囲むような形で流れるシテ河の支流から作り出された新たなる水龍が、邪神の攻撃を防いだのだ。
何者に造り出され、操られたのか判らない。しかし、精霊の悲鳴は聞こえず、更に、邪神顕現のような場面で精神に異常を来す事なく対処出来る存在が、そう存在するとは考えられない。
まして、この水龍が発する霊力は、水の精霊が造り出した水龍と互角。
これは、おそらくカジノ内に現れた二人の内のどちらかの存在に因る魔法。
そう考えた瞬間。タバサが、最後の水行符に息吹を籠めて放った。
最後の呪符が起動した瞬間、それぞれの呪符が行に応じた光を放ち、相生に従い曲線を。相克に従い直線を空中に描き出す。
少し距離を取り、牛角の邪神を睥睨出来る位置に滞空。
同時に、右手を高く掲げる|タバサ
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