第百二十三話 怨念の荒野
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「けれど幾ら頑張ったって人は死ぬ時は死ぬんだ」
シンのこの言葉は残念ながら一面において真実であった。
「そうじゃないのか!?」
「僕達も出来る限りのことはする」
獅子王博士もそこにいた。
「だからシン君、僕達を信じてくれ」
「・・・・・・くっ」
信じ切れないがそれでもこの場は引き下がることにした。医務室を去るシンの側にはアスランが付き添っていた。
「御前の気持ちもわかる」
アスランは彼に対して言う。
「だがな。今はどうすることもできない。博士達を信頼するしかないんだ」
「けれど」
シンは俯いて言葉を吐き出す。
「信じて結局ステラが死んだらどうするんだよ」
「だからそれは」
「ステラはどんどんおかしくなっていってるじゃないか。それでこのまま死んだら」
「・・・・・・その時は好きにしろ」
アスランはシンから顔を離してこう述べた。
「御前の好きなように。彼女が死ぬのならな」
「・・・・・・好きにか」
「御前は家族の為に戦っているんだったな」
「ああ」
それはもう言うまでもないことであった。
「誰かを守る為に。彼女も守りたいんだろう?」
「ナチュラルでもどうでもいいんだ」
シンのその言葉には血が滲んでいた。
「俺は約束したんだ、彼女に。だから」
「皆、守りたいのか」
「だから戦っているんだ」
彼は言う。
「俺はどうなってもいい。けれど家族もステラも守りたい」
「・・・・・・そうか」
アスランはその言葉を静かに聞いているだけだった。
「だから御前はラクス嬢に選ばれたんだな。同志として」
「クルーゼ隊長のことは俺にとってはどうでもいい」
それは彼の考えであった。
「けれど俺は家族の為に。だから」
「わかった。だが今は皆を信じてやってくれ」
「ナチュラルでもか」
「今時分でも言ったじゃないか。ナチュラルでもどうでもいいって」
「ああ・・・・・・」
「だからだ。ここは皆を信じるんだ、御前が一番辛いのはわかっているけれど」
「けれど彼女が死ぬ位なら」
「御前は自分の命を捨てるつもりか」
「そうだ。悪魔にでも何でもなってやる」
「御前は悪魔になることはない」
「どういうことだ!?」
「デスティニーの翼を見るんだ。それでわかる」
「デスティニーの翼に?」
「御前とキラはな。翼を持っているんだ」
「あいつと俺が・・・・・・。どういう意味なんだ」
「いや、言葉のあやだ。けれど」
アスランは言う。
「今は・・・・・・堪えるんだ」
「くっ・・・・・・」
アスランの言う通りだった。今はシンは堪えるしかなかった。それがどれだけ辛くとも。今彼はステラのことだけしか考えられなくなっていた。だがそれでも。彼はどうにもならない苦しみの中に身を置いていた。
第百二十三話完
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