暁 〜小説投稿サイト〜
とある完全模写の物語
信じた先にあるもの
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その言葉を言い切る前に、ステイルの眼前を何かが通りすぎる。

 ステイルは嫌な予感を持ちながらも火織の方に視線を向け、そこで見たのは、七天七刀を手に持ち構えている火織の姿だった。

 戦闘に慣れているステイルでさえも見えない程の速度を持つ攻撃。これが聖人と呼ばれる特殊な力をもった人間の力だ。

「い、いい加減にしないと本当に斬りますからね!」

 当然冗談で火織はそう言っているのだろうが、七天七刀を向けられたステイルからすれば本当に斬られると思ってしまい、ステイルは直ぐ様背後を見せ、ビルから姿をくらませた。

 それを見た火織は大きくため息を零し、チラリと横目で神堂の方を確認する。

 しかし、神堂の様子は先程となにも変わらず、至って普通。特に取り乱した様子はなにもない。

 それを見た火織は何処か安心した気持ちになるが、それと同時にモヤモヤとした何かが胸を奥に渦巻く。

(この人は本当に…)

 鈍い。

 これは何時も火織とステイルが感じている事。

 神堂は基本女性から好意を向けられてもそれに気付く事はあまりない。余程過激な行動に出られた時には流石に気づくが、今のような火織の行動程度ではまず気づかない。つまり鈍感な男と言う事だ。

 …それも仕方がないと言えば仕方がないのだが。

 神堂が身を置く周辺の都合上、恋愛と言うものに関わった事が彼には一度もないのだから。最も、それが鈍感につながるのかと言われればなんとも言えない所。

「どうした?早く行くぞ?」

「…分かりました」

 これは今に始まった事じゃない。そう火織は自分の中で思いながら神堂の後に続くのであった。

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