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蒼き夢の果てに
第4章 聖痕
第36話 影の国の女王
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使い走りのような扱いを受けているようで気に入らないのは事実ですね。が、しかし、文句を言っても始まらないですし、前回のヘカテーの時のように俺にも関係の有る仕事の可能性が高いとも思いますから、話だけでも聞いて置く必要は有るでしょう。

「私に出来る仕事ならば喜んで引き受けさせて貰いますよ」

 それに、どうせ引き受けなければ、現実世界に帰る事は出来ないとも思いますから。
 まして、今現在、俺が現実世界に帰る方法については、さっぱり判っていないのも事実です。この部分に関しても、前例を踏襲していると思いますしね。

 女性が少し首肯いた。そして、右腕を軽く振る。
 刹那、彼女の右手に一振りの槍が現れた。
 槍と関係する女神?

 有名ドコロではスカアハ。天沼矛(あまのぬぼこ)を槍の一種と考えるのなら、伊邪那美(イザナミ)も関係が有りますか。それに、ワルキューレも多分、関係が有りますね。

 いや、東洋系に分類されるなら、イザナミは東洋系に分類される女神ですが、ワルキューレはどう考えても西洋の女神さま。
 えっと、それでスカアハについては……。

 スカアハとは、出自はかなり北方で信仰されていた、女神にして巨人のスカジのはずです。そして、北欧の更に北方と言うと、モンゴロイドが信仰していた女神さまの可能性も有ります。

 まぁ、現在の彼女の姿形は、俺に判り易い姿形を採用しているはずですから、黒を基調としたケルトの魔女を示す服装と彼女の手にする槍から推測すると……。

「影の国の女王よ。それで、私は、一体、何を為せば良いのでしょうか?」

 俺が、改めて、その女性に対してそう聞いた。

 影の国の女王スカアハ。祝福されざる者たちを統べる女神。魔槍ゲイボルグをクー・フリンに授けた事でも有名な女神さま。
 もっとも、元々は北欧神話に登場する神々の麗しい花嫁スカジだったと思われ、先ほども考えたように、そのスカジ自身も、かなり北方の住民に祭られていた女神さまなのは間違いないでしょう。

 何故ならば、スカジが父親の仇討ちの為にアースガルドに乗り込んで来た(くだり)や、彼女とニョルズとの結婚と別れの件などから、彼女が元々のアース神族に分類される女神などではなく、別の地域出身の神をアース神族が取り込んだ事は確実だと思いますから。

 但し、相手の正体が判ったトコロで、俺が何故に影の国に呼ばれたのかが判らない事に変わりはないのですが。

 それに、スカアハタイプの武芸を重視するタイプの神の試しは、先ず、自らを倒してから話を聞け、と言うパターンも多いのですが……。

 影の国の女王と思われる女性が少し笑った。
 この笑いは陰の気の籠った笑いではない。とすると、俺の予想は外れていなかったと言う事なのでしょう。


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