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蒼き夢の果てに
第4章 聖痕
第35話 仮面の支配人ファントム
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掴もうとしたのですが、相手も簡単にそんなシッポを掴ませるような連中では無かったみたいです。

「ラウル。ラウルとお呼び下さい、仮面の支配人殿」

 まぁ、仕方が有りませんか。一応、俺の方も本名を名乗る事なく、咄嗟に思い付いた偽名を名乗って置くのは忘れませんが。

 もっとも、俺の名前を呼ぶ人物はそうはいないのですがね。
 タバサは、何故か『貴方』と呼びはしますが、彼女から名前を呼ばれたのは、確実に覚えているのは、最初に【念話】のやり方を教えた時のみなのですが……。

 ……あれ? そう言えば、何故に、名前を呼んでくれないのでしょうか。

 一拍の間を置いた仮面の支配人が、少し大仰な仕草で両手を開いて見せる。
 まるで、舞台の上の役者を思わせる雰囲気、及び仕草で。

 そうして……。

「ミスタ・ラウル。私どもは、お客様に細やかな夢の時間を提供しているに過ぎません。そこに、無粋な名前や、有りふれた素顔など必要とはしていないでしょう」

 正に、舞台の上の俳優そのままの台詞を俺に対して告げた。
 いや、不特定多数の観客に対して語った。

 確かに、夢の空間に等しいこのカジノには、無粋な本名や、有りふれた素顔など必要ではないでしょう。

 その仮面が本心を隠し、偽りの名前が、現在と過去の自分を塗り潰すのですから。

 まして、このカジノで見る夢は、俺に取っては悪夢としか思えないのですが。

「心配する必要はない」

 何時の間にか、元のソファーに腰を下ろしていたタバサ(クリスティーヌ)が、俺に対してそう言う。
 普段通りの彼女のままに。

「しかし、クリスティーヌ」

 彼女の方を見つめ、そう、尚も何かを言い募ろうとする俺。
 但し、そろそろ、頃合いだとも思うのですが。
 もう十分、俺が現状に不満を持っている、と言う事について表現出来たと思いますから。これ以上、時間を掛けたとしても、大きな成果を得られるとは限りません。

「ラウル様が御懸念に及ぶのはもっともでございましょう。
 確かに、私どもの同業の者の中には些か性質の悪い者も居ります故。
 しかし、私どもは、そのような輩とは一線を画する店だと自負して居ります。
 それが証拠に、店内では一定時間ごとに、ディテクトマジックにより、魔法を使用した不正行為が行えない仕組みを作り上げて居ります」

 妙に芝居掛かった台詞に本心を隠し、白い仮面に表情を隠して、偽りに塗れた支配人がカジノのオーナーの台詞を口にする。

 しかし、それは事実でも有ります。
 もっとも、この危険な香を焚いた閉鎖空間で長い時間行動して、真面な判断力を有して居られる人間は早々いないと思いますけどね。

 従業員と、タバサと俺以外には。

「それでも尚
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