第4章 聖痕
第35話 仮面の支配人ファントム
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うに思います。
但し、その顔を覆っている白い仮面が、その人物が男性で有るのか、はたまた女性で有るのかの判断を付けさせなかったのですが。
……って言うか、またもや白い仮面ですか。
「お待ちして居りました。お嬢様」
やや、細い髪質の金を白い仮面の額の部分に掛けたこのカジノのオーナーが、部屋の中央に設えられている上質そうな革張りのソファーの上座の方に、タバサと、そして俺を座るように進めながら、そう言った。
声の質は男性。但し、仮面を被っているが故に、多少、くぐもったような声に聞こえ、更に、仮面を付けているが故に、先ほど、俺とタバサにソファーに座る事を進めた声が、この眼前の人物が発した声か、それとも違うのかについても判らなかったのですが。
そして、タバサと俺がソファーに着いたのを確認した後に、
「初めまして。このカジノのオーナーのファントムと申す者でございます」
……と自己紹介を行い、そして、貴族風の一礼を続ける仮面の支配人。
いや、これでは、自己紹介には成ってはいませんか。何故ならば、素顔を晒す事なく、更に本名を名乗る訳でもない。これでは正式に自己紹介を行った事に成る訳がないでしょう。
ただ、彼が行った礼に関しては、非常に堂に入った物で有り、本人が貴族階級の出身か、それとも、真面な貴族の屋敷で働いた経験が有る事を窺わせるモノでは有りました。
まぁ、そんな事はどうでも良いですかね。何故ならば、既に駆け引きは始まっていますから。
「クリスティーヌ。矢張り、ここに来たのは間違いだったようです。直ぐに、ここから立ち上がって、今夜勝った分のチップを手形にした後に、屋敷へと帰りましょう」
そう言って、タバサを促すように立ち上がる俺。
当然、その俺に続くようにタバサも立ち上がった。
尚、このクリスティーヌと言うのはタバサの偽名です。もっとも、そもそも、そのタバサと言う名前自体も偽名なので、偽名の更に偽名と言うのも妙な話なのですが。
但し、当然、本気で帰る心算で立ち上がった訳では有りません。ただ、後の勝負に少しでも有利な状況を作る為の布石ですから。
こんな、危険な薬物や、洗脳紛いの方法を使って儲けている違法カジノは、それだけでも潰す必要が有ります。まして、生贄を要求する邪神を信奉する殺人祭鬼の可能性も有る連中です。
流石に野放しにする訳には行かないでしょう。
「お待ちください、ミスタ……」
ファントムと名乗った仮面の支配人が、何かを言い掛けてから、俺の名前を知らない事に気付き言い淀んだ。
いや、そう言う振りをした可能性の方が高いかも知れないのですが。
但し、確実な証拠を掴む為に、小芝居を弄してまで、このカジノのオーナーの発する気を
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