第29話
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恐るべき速度で飛び込んできた。
赤い少女は腰にあるL字の釘抜きを引き抜くと麻生が掴んでいる襲撃者の手首に向かって、思いっきり振りかぶる。
麻生は咄嗟に手を放し次の瞬間にはボギン!!、と凄まじく鈍い音と共に襲撃者の手首がおかしな方向へと捻じ曲がる。
それでもナイフを手放さなかったのは襲撃者の執念なのだろうか?
「ぎ、びぃ!ぎがぁ!!」
床下からの咆哮と共に襲撃者の手が床下へと逃げ込む。
「逃がすかよ。」
麻生は床下をダン!、と軽く踏みつけると麻生の前方の七〇センチくらいの大穴が空く。
踏みつけた衝撃を拡散、増加させる事で床下に穴を空けたのだ。
事前に打ち合わせでもしてたかのように、今度は赤い少女が大穴へと飛び込んでいき麻生は上条の前に立ちながら大穴を見つめている。
その大穴からガンゴン!!、と凄まじい音が床下から炸裂した。
すると、ズバン!!といきなり五メートル前方の床下が爆発するように弾け飛びそこから黒い影が飛び出てくる。
一目で内臓がボロボロだと分かるような不健康な肌、汗と泥、血と油によって汚れたページュの作業服、右の手には鉄の爪のような三日月のナイフ、左の手首は折れて青く鬱血している。
その唇から赤い血の筋が垂れていた。
前歯と犬歯、二本の歯が強引に抜かれていた。
「エンゼルさま、どうなってんですか。
エンゼルさま、あなたに従ってりゃあ間違いはない筈なのに!
どうなってんだよエンゼルさま、アンタを信じて二八人も捧げたのに!」
男の言葉を聞いて追撃をかけようとした麻生の足が止まる。
上条と麻生は今日一日流れていたテレビニュースを思いだす。
男の服装からして死刑囚などの犯罪者が着るような服を着ているので、彼が火野神作である事は分かる。
なのに、どうして火野神作は誰とも入れ替わっていないのか?
御使堕しによって誰もが入れ替わっていなければおかしいのに。
火野神作はナイフを振り上げて麻生に斬りかかるのかと思ったが違った。
火野は自分の胸に三日月のナイフを突き立てたのだ。
メチャクチャに振るうナイフは作業服を引き裂き、汗にまみれたシャツを切り裂き、あっという間に血に染まる。
一見して乱暴に見えた無数の傷は机に彫ったラクガキのような文字の形を取っていた。
GO ESCAPE
ただ英単語を並べただけの「言葉」、しかし火野はその言葉を見ると壮絶な笑みを浮かべる。
瞬間、麻生と火野の間に割って入るかのように床板が大きく爆ぜ割れ、赤い少女が飛び出してきた。
その手にあるペンチには何か白く小さな物が挟んであった。
人間の前歯のように見えたそれは赤い少女がペンチを握る手に力を込めるとそれはあっさりと砕け散った。
麻生は火野を見た時不
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