朝焼けの中で
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! 確かお父さんの服があったからそれを着る事!」
「? ああ」
ヴォルフは神無が何を怒っているのか理解出来ずに首を傾げると、彼女はそんな彼の手を取って自宅へと歩いていく。
彼女の手を払う気にはなれなかった。その手は柔らかく、暖かかったから。
「あらあら。少し、小さいですね」
神無に引っ張られるままに四季上家に着いたヴォルフを待っていたのは、夏空の叱責と小冬の質問攻めだった。
殆ど神無に言われたことを夏空にも言われ、小冬にはナルガクルガやジンオウガについてと、ヴォルフが刀を手放そうとしなかった理由などを問われたが、服を用意した神無が割って入った為に中断することになった。
そしてヴォルフは今、彼女達の父親が来ていたという着物を着ている。薄い紺色で着古した感のある服だったが、そのぶん柔らかくて着易いものだった。
ただ、ヴォルフの身体はどうやら父親よりも大きいらしく、腕と足の裾が足りていなかった。
「着れれば問題ない」
ヴォルフはそう言うと刀を帯に差した。
「ヴォルちゃん? 家の中での帯刀はちょっと……」
「ここにモンスターはいないわよ?」
「俺はこれを手放さない」
視覚的に問題があるヴォルフの行為に、夏空と小冬が嗜めるように言うが、ヴォルフは簡潔にその言葉を拒絶した。
「……さっきは聞けなかったからもう一度訊くわ。どうして貴方は刀を手放さないの? 昨夜も、意識が無いのに手放そうとしなかった」
小冬がヴォルフを見定めるような目で尋ねる。
「俺の今までの生涯を共にしたのがこれだ。代わりは利かない」
彼女達は理解した。彼にとってその刀とは半身であり、人間以上に信頼されているものなのだと。
「皆、ご飯出来たよ!」
神無の声が台所から届く。
「はーい」
「分かった」
夏空と小冬が返事をするとヴォルフの腹から音が鳴った。その音があまりにも大きかったのが可笑しかったらしく、夏空が噴出した。
「そういえば、昨日から何も食っていないな」
「そうなんですか? なら安心してください」
「神無、今日は張り切ってたから」
「ほう」
そう呟くや否や台所へとヴォルフは向かった。
「……そんなに空腹だったの?」
「そうみたいですね」
その速さはとても歩いただけとは思えないほど速かった。
『いただきまーす』
『……いただきます』
元気に言うのは神無と夏空、静かに言うのは小冬とヴォルフ。
長机に並ぶのは白米のご飯の他に、小魚の佃煮、村伝統の汁物、ガーグァの卵の出汁巻き卵、生野菜が沿えられた一口サイズに刻まれた焼肉、などなど。
「神無ちゃん、頑張りましたね」
「凄い量」
「えへへ、ちょっと張り切っちゃいました」
照れた神無が舌を小さく出していう。
「
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