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人狼と雷狼竜
朝焼けの中で
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うでは致命的だ。
 それでも戦えないことは無い。今までに負ってきた傷の中にはもっと酷いものすらあった。それに比べれば大した事は無い。
「ヴォル君!」
「ん?」
 神無の声が耳に届いた。気付けば周囲には人が集まっている。昨夜、怪我人として運ばれてきた人物が起きて刀を振るっていれば、嫌でも注目が集まるというものだ。
 そんな中で着物の裾を押さえもせずに神無が走り寄って来るのが見えた。
 ヴォルフはそれを見ると刀を鞘に収めた。
「ヴォル君……」
 ヴォルフの前に来た神無は不安そうな、それでも安心したような、複雑な顔をしていた。
「……世話になったな」
「えっ?」
 ヴォルフの突然の言葉に、神無は頭の中が真っ白になった。
「本当に助けられるとは思っても見なかった」
「あ、ううん。ヴォル君は大丈夫なの?」
 若干慌てながらも、神無は気になっていた事を尋ねる。
「……問題は無いが、奴とはまだ戦えない。当分は休息か、他の狩りに出るしかないな」
「休息だよ! 今のヴォル君には休息が必要なの!」
 急に神無が大きな声を上げた。
 ヴォルフが改めて神無を見ると、彼女は今にも泣き出しそうだった。
「雷を受けたんだよ!? 皆も私も心配してた」
「……心配? 俺を?」
「当たり前だよ! ヴォル君が、また何処かに行っちゃうって思ったら……」
 不意に神無の目が何処か遠くを見るような目になった。
「何の話をしている?」
「え? だからヴォル君が心配だって……」
「……」
 ヴォルフは今の神無を見て、言えなくなった。この依頼が片付いたらまたあても無い旅に出るつもりだとは。先程の神無の雰囲気にはそれを告げてはならない物があった。
「……そうだな。休息に当たる。他にも出来る事はあるだろう」
「他にも?」
「ああ。それはこれから考える」
 ヴォルフがそう言うと、神無は安心したように胸を撫で下ろした。
「じゃあヴォル君早速なんだけど……」
「ん? 何かあるのか?」
 目を逸らし、何か言い辛そうな神無だったがヴォルフはそれに気付かず、早速何か出来ることがあるのかと期待した。
「ちゃんと服を着ようね?」
 神無の言葉にヴォルフは首を傾げつつ自分の身体を見た。
 上半身は裸の上に包帯、下半身は袴だけという珍妙な服装だった。
「……何か変か?」
 しかし、ヴォルフにはそれが分からず……
「変だよ!」
 神無からの訂正が入った。
 神無はヴォルフの様子見て少し疑問に思った。自分の外観を全く気にしていないような人物の髪が、何故しっかりと整えられているのか。金糸のような髪が朝日に照らされて輝く中で、細身ながらも過不足なく鍛えられた逞しい体に添えるように伸びているのが、嫌でも目に入る。
 だが、今はそれどころではない。
「もうっ
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