暁 〜小説投稿サイト〜
木の葉詰め合わせ
本編番外編
とある兄弟シリーズ
とある弟の独白
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してくれた。
 だからこそ、その誇りを奪わないで欲しいのだ。

 そう言って微笑めば、頬に何か暖かな物が落ちて来た。

「あれ? 泣いているんですか?」
「な、泣いてない! これ以上は何を言っても無駄だからな! 泣いても喚いても、力づくで治療する!」

 ふふふ、と微笑む。
 とっても強いのに情に厚く、優しい――誰からも畏れられているのに、同時に誰からも認められている人。
 この人の心根はちっとも変わっていない。本来なら仇である自分のために涙を流しているだなんて。

「ねぇ、一度だけでいいから……僕の事、名前で呼んでくれませんか?」

 だからこそ、せめて自分の名を最後に呼んで欲しかった。
 この人と来たら、最後まで人の事を「弟君」としか呼ばないのだから――せめて一度だけでも。

 呼んでくれたら、きっと自分は満たされるだろう。ただ、その一言だけで。

「イズナ、君?」
「あなたの敵として、対等な相手として……認められたかったんです。ずっと、前から……、僕も、にい、さ……」

 兄と一緒にずっと追いかけていた。
 叶うならばその正面に立って自分の存在をその目に映して欲しかったけど、これはこれで構わない。

 瞳を閉ざす――とても心は満たされていた。
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