第二部
第一章 〜暗雲〜
九十一 〜新たなる智〜
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「朱里や愛里が世話になっているから、礼を述べたいとあるな」
「ええ。水鏡先生の庵は、此所から程近い場所にありまして。歳三様が近くまでお越しなのを知っての事かと」
「だが、私塾がある故出向けぬ。出来れば私に来て欲しい……か」
「如何でしょうか? 水鏡先生は立派な人物です。決して、歳三様の損にはならないと思いますが」
「うむ……。紫苑、司馬徽殿の意図は、本当にそれだけであろうか?」
私の言葉に、紫苑は小首を傾げる。
「そうですわね。歳三様が今何をされているか、それは承知の上でしょう。……ですが、害意はない事だけは私が保証しますわ」
「いや、それは私とて同じ。愛里らの師が、そのような人物であろう筈もないからな」
「はい。……それで、如何なさいますか?」
今のところ、賊軍の姿もない。
警戒は怠っておらぬが、今の我が軍が不意を突かれる恐れはないと申して良かろう。
「稟と風に諮るとする。それからでも遅くあるまい」
「わかりました。もし行かれるのであれば、私がご案内しますわ」
「うむ。お前が一緒ならば心強い、その節は頼んだぞ」
「はい!」
そして、翌朝。
紫苑と共に、司馬徽の庵へと向かった。
他の者も同行するとせがまれたが、有事の際に将があまり不在では好ましくない。
それに、大人数で動けば目立つ。
それ故、伴う兵も十名のみとした。
ただし、皆が一騎当千の強者揃い、少数の賊であれば蹴散らす事も不可能ではなかろう。
尤も、戦闘は極力避けるように皆から釘は刺されているが。
幸い、何事も起こらぬまま、司馬徽の庵に到着した。
庵とは言うが……私塾を兼ねているだけに、ちょっとした屋敷程の規模だな。
「此所だな」
「はい。……あら、水鏡先生がお出迎えですわ」
門の処に、妙齢の女が立っている。
年の頃は……ふっ、野暮と言うものだな。
そして、やはり美形か。
「態々のお運び、ありがとうございます。わたしが司馬徽です」
「土方にござる」
「お名前は予てから。ささ、中へどうぞ」
「では。お前達は此所で待て」
「はっ!」
兵らを残し、紫苑と共に門を潜った。
廊下で、何人かの少女とすれ違う。
「水鏡先生。相変わらず、たくさんの生徒がいるようですわね」
「そうなの。入塾希望者が絶えなくてね、特に愛里と朱里が仕官してからはね」
「うふふ、それは仕方ありませんわ。仕官先が、此方の歳三様とあれば」
「全くです」
どういう事だ?
確かに、司馬徽門下の二人が私の許にいるという縁はあるが。
そんな私の顔色を見たか、司馬徽が微笑む。
「土方様。貴方ご自身が思われている以上に、土方様の名前は知られていますよ」
「ほう。ですが拙者は出自も定かではない武人にござるぞ?」
「ふふ、ではその
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