雷を纏いし森の王者
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る。
「……梓ちゃん、椿ちゃん。ヴォル君が……」
対する神無は大粒の涙を流しながら、小さな声で返しながら二人を見上げた。腕の中には意識を失ったヴォルフの姿があった。
「……ごめん。私……」
「……何も出来なかった」
梓と椿もそう言って力なくしゃがみこんで項垂れた。
その時、何かがこちらに近づく足音が響いてきた……複数だ。ジンオウガが去った方向とは逆だ。
梓と椿は思わず身構えたが、人の声が聞こえた。
「あ! ギルドの皆!」
「良かった……椿、そこで神無達を見てて」
「うん」
梓が足音の聞こえる方向へ走っていき、数人のハンターと一緒に戻って来る。
「怪我人は誰だい?」
リーダー格と思われるハスキーな声の女性が神無と椿に尋ねた。
その声には緊張感が含んでいる。最悪の事態に備えた熟練者の声だった。
「この人……」
椿が神無の腕に抱えられたヴォルフを指して言う。
「二人は担架を用意。キミは一足先に戻って村長に連絡。キミは気付け薬を用意。さて、診せておくれ」
女性が膝を突いてヴォルフの頬に触れて、首筋、肩、腕、と掌を這わせていく。
「……何があったんだい?」
女性に訊かれ、椿と梓は顔を見合わせ、神無は力なく俯いて言った。
「ジンオウガと戦ったんです」
「雷を受けました」
それを聞いた女性はあからさまに顔を顰めたが、ヴォルフの様態を一通り診終わると、小さな溜息と共に微笑んだ。
「……大した打たれ強さだ。命に別状は無いよ」
女性がそういうと、神無の顔にようやく笑顔が浮かんだ。
「ありがとう。ありがとう。朱美さん」
涙交じりの声で神無が朱美と呼ばれた女性に言った。
「良かった」
「助かったのね」
梓と椿も安心したのか安堵の表情を浮かべている。
「何を安心してるんだ? キミ達は反省しろ。私達の到着を待たなくても出来る事は山ほどあった。何故それが出来なかった?」
不意に朱美の口調が変わった。表情も先程のものより厳しい顔をしている。
「命の危機だったのだろう? なのに何故キミ達は動けなかった? 出来る事はあっただろう? 薬の調合は無理でもその辺の木の枝と上着で簡易な担架位は作れた筈だ」
その厳しい言葉に三人は俯くことしか出来なかった。
「キミ達はまだハンターになってまだ日が浅いとはいえ、こんな調子じゃ死人が出る。身に刻んでおくように」
『はい』
「でも……」
不意に彼女の口調が優しいものに変わった。
「彼を見捨てなかったその心は正しかったよ。それを次に生かすと良い」
『はい!』
彼女の言葉に三人が返事をする。
「担架の準備できた」
「薬もだ」
他のハンター達が報告する。
「よし。じゃあまずはその兄ちゃんを担架に乗せるよ。イチニのサンでいくからね。それと神無
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