雷を纏いし森の王者
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!」
しかし全身に激しい痛みが走った! 焼けるような痺れるような痛み……感電か!?
更には服が奴の爪に引っ掛かってしまい、そのまま地面に叩き付けられた。
「がはっ!?」
咄嗟に頭は庇ったものの、前面の殆どを強打した。奴の足が地面を強打した際に吹き飛んだ石や砂塵までもが俺を傷つける。
それでも運はある。引っ張られたのはあくまで服だ。直に叩き付けられた訳じゃない。ましては奴の足と地面のサンドイッチにされたわけでもない……そうなれば即死だ。
激痛を堪えて素早く起き上がりながら前方に跳んだ。ジンオウガは既に三撃目を繰り出していた。破砕音と共に衝撃波が発生し、これにバランスを狂わされて着地に失敗した。
「うぐっ!」
背中から地面に落ちたがまだ立てる。
激痛と感電による身体に痺れは全身に及び何処が痛いのか見当もつかないが、幸いにも骨を折ったりはしていないようだ。
刀も無事だ。まだ出来ることはある。
ジンオウガが俺を見ている。追撃を放ってこない辺り、コイツは他のモンスターとは違うのかもしれない。
奴の前足を見る。両方の前足は険しい山中を自由に駆け回るために進化したもののようで、非常に発達しているのが分かる。取り分け両側面……人間で言う薬指と小指は大きく広がり、湾曲した大きな鉤爪が伸びている。あの時回避し損ねたのはアレが原因か。
そういえばあいつ等はどうしたんだ? 逃げていればいいんだがな。手を出そうものならジンオウガの攻撃対象となる。
ナルガクルガに反応出来なかったのなら、コイツには瞬殺される……それだけは避けたい。
足が震える……さっきの感電のショックか。それどころか、全身が痙攣するように震えている―――――だが。
鞘に収めたままの刀を左手で腰に固定しつつ、右半身を前に出して居合いの構えを取る。
……今の状態で大技が出せるか? それ以前に……あの状態のアイツにどうやって斬り掛かれば良い?
意識が明滅し、吐き気がする。―――――まだだ。
ジンオウガはほぼ全身に稲光を纏っている。あの範囲に武器が入り込めば、電流が武器を介して俺自身を直撃する。
軽く触れただけでこの有様だ。あの飛来する雷光虫の直撃などどうなるか考えたくも無い。それどころか……奴はまだ全力を出してない。
勝機は無いに等しい。だが俺はまだ戦える。
痛みと共に何かが脳裏を横切った―――――遠い記憶……幼かった俺と、ジンオウガ――――何だ今のは?
「アウォオオオオオオオオオオオン!」
余計な考えに身体が固まった瞬間にジンオウガが咆哮を上げ、気付いた時にはもう遅かった。
周囲の雷光虫が一斉に飛び立って俺とジンオウガの周囲を舞う。その光景はさながら光の吹雪のようだった。
その光景はあまりにも美しく――――――
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