第十七話 黒真珠の間(その二)
[4/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
時、男ってのは子供に帰るよな。ファーレンハイトやワーレン、メックリンガーも興味深そうに見ている。アイゼナッハとビッテンフェルトもだ。ミュラーからはちょっと遠いな、残念だ。
「これは何の皮かな」
「エイですよ」
俺は滑り止めにエイの皮をグリップに貼っている。昔、カストロプの手下に襲われた時、怪我した所を右手で触ってしまった。その所為でグリップが血でヌルヌル滑ってどうにも落ち着かなかった。それ以来エイの皮を使うようにしている、先代の頭領に奨められた事だ。その時言われた、“利き腕は常に使えるようにしておけ、エイの皮もそのためだ”。不器用だが渋い親父さんだった……。
「なるほど、しっくりくるな……。それにかなり使い込んでいる、手入れも良い。エイの皮か、俺も使ってみるかな」
「ルッツ提督、俺にも触らせてくれないか」
ルッツの言葉にワーレンが反応した。そしてワーレンに渡そうとしてちょっと訝しげな表情をし、俺を見た。気付いたか……。
ワーレンは受け取るとグリップを強く握って“なるほど、感触が良いな”と言っている。ビッテンフェルトも“そうか”と声を出した。そのうち帝国軍でもエイの皮が流行るかもしれないな。エイが絶滅しない事を祈るのみだ。アイゼナッハも手を出した。その手にワーレンからブラスターが渡る。こいつも首を傾げた。
正規艦隊司令官達が見終わると阿呆共にブラスターが渡った。何だかな、顔を見合わせている。ゾンバルト少将がブラスターを握ると俺に銃口を向けた。嫌な笑みを浮かべている。
「黒姫、命が惜しかったらヴァンフリート星域を帝国へ渡してもらおう」
阿呆共はニヤニヤ笑っている。正規艦隊司令官達は眉を顰めただけだ。大体予想通りだ。阿呆共、あんまり予想通りなんで欠伸が出た。もう少し意表を突いてくれ。“ヴァンフリート星域を帝国へ渡さないとお前のブラスターで自殺する”とか“他の奴を撃っちゃうぞ”とか。
「何を欠伸などしている! 死にたいのか」
「撃ったらどうです、遠慮せずに」
うん、我ながら投げやりな声だ。可笑しくて笑い声が出た。
「止せ、エーリッヒ。ゾンバルト少将も馬鹿な真似は止めろ」
ミュラーが顔を青褪めさせている。他の連中は困惑だな、どうせゾンバルトは撃たないと見ているのだろう。他のテーブルでもこっちを見始めた人間が居る。これは引くに引けないな、ゾンバルト。顔が引き攣ってるぞ、“貴様”とか呻いているが大丈夫か?
ルッツが溜息を吐いた。
「ゾンバルト少将、そのブラスターにエネルギー・カプセルが入っているか?」
「えっ」
キョトンとしたゾンバルトが慌ててブラスターを折って調べた。エネルギー・カプセルは入っていない、呆然としている。多分輸送部隊をヤンに撃破された時も同じような顔をしていたんだろう。間抜け、笑いが止まらん、本
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ