暁 〜小説投稿サイト〜
銀河英雄伝説〜その海賊は銀河を駆け抜ける
第十七話 黒真珠の間(その二)
[1/6]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話


帝国暦 489年 3月31日   オーディン  新無憂宮  エーリッヒ・ヴァレンシュタイン



俺が笑っている傍でミュラーが引き攣っている。引き攣っているのはミュラーだけじゃない、皆だ。阿呆共、俺はコケにされるのに慣れていないんだ。少しは反省するんだな。
「エ、エーリッヒ」
「冗談だよ、ナイトハルト。ちゃんとこうして相手をしてもらってるんだから感謝している。元帥閣下にもそう言うから安心して良いよ」

「そ、そうか」
ミュラーがホッとしたような息を吐く。そんな露骨にホッとするなよ、ついついからかいたくなるじゃないか。
「出来る男がやっかまれるのは仕方ないからね。こんなのは慣れているよ」
「エ、エーリッヒ」

あらあら、今度は皆顔に力が入っている。怒ったのかな、なんで怒るんだ? 俺は事実を言っただけだぞ。君達より俺の方が出来ると評価したのはラインハルトだ、文句あるのか?
「海賊め、良い気になるなよ」

怒り心頭に達した、そんな声を出したのは若手士官の一人ゾンバルトだった。一応初対面なんだよな、知らないふりをしないと。
「知らない方ですね、メックリンガー提督、そちらの方々を紹介して頂けませんか」
俺の頼みにメックリンガーは気の進まない表情をした。理由は分かっている、こいつ等は反黒姫の急先鋒なのだ。そして正規艦隊司令官達、彼らは俺を認めてはいるが好意は欠片も持っていない。ハインリッヒ・リスナーの報告だ。

「紹介しよう、トゥルナイゼン中将、アルトリンゲン中将、マイフォーハー少将、ゾンバルト少将、クーリヒ少将、ザウケン少将だ」
口調に精彩が無い、紹介された方も碌に挨拶もしないしそれを咎める声も無い。つまり此処は敵地だ。
「エーリッヒ・ヴァレンシュタインです、宜しく」
「……」

どいつもこいつもフン、という声が聞こえそうな態度だ。可愛いぞ、お前達。後でゆっくりと遊んでやる。だが先ずはラインハルト登場だ、一応そっちに視線を向けないとな。一時休戦と行こうじゃないか。

ラインハルトが登場すると歓声が上がった。人気あるよな、見栄えも良いし華が有る。一緒に居るのはキルヒアイス、ヒルダ、フェルナー、シュトライトにリュッケだな。ラインハルトが手を上げて歓声に応える、歓声がより大きくなった。なんかプロレスみたいなノリだな。スーパースター登場! となると憎まれ役のヒールは極悪非道、凶険無道の辺境の大海賊、黒姫か。燃えるな、悪役が輝いてこそドラマは盛り上がる。

黒真珠の間には大きな丸いテーブルがいくつも置いてある。そして中央には料理が並んでいる。ビュッフェ形式で親睦会を行うわけだ。俺だったら席を固定にして文官と武官を適当にばらけさすけどな。その方が親睦を深める事になると思うんだが……、まあ気休め、って事だな。


[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ