第百十一話 青を見つつその四
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
だからこそ家康はこう家臣達に告げた。
「国境は厳重にせよ」
「例え十勇士達が来てもですな」
「困らぬ様に」
「蟻一匹入られない様にせよ」
これは比喩だが本気でそうせねばならないとも思っている家康だった。
「道もじゃ」
「そこは関所を設けて」
「そのうえで」
「うむ、そうじゃ」
関所もだというのだ。
「あそこも固めるぞ」
「ですな。織田殿は関所を設けてはおられませぬが」
「我等は」
「織田殿には犬山城がありますな」
榊原がこの城のことを言った。美濃の東、信濃との境の方にある城である。
「あの城が武田家への関所でもあり要害でもあります」
「あの城か」
「左様、東にはあの城があり」
榊原は家康にさらに話す。
「飛騨はあの山です。忍もとても」
「入られぬな」
「かろうじて美濃から飛騨に道は引かれる様ですが」
「飛騨から越中となるとな」
「道を引かなくては通れるものではありませぬ」
そこまで険阻だというのだ。
「ですから飛騨もです」
「天然の要害だからか」
「関所を設けることもありませぬ」
「そうなるのじゃな」
「近江は浅井殿がおられますし」
朝倉家との仲はよくないが間には彼等がいた。
「毛利山名についてはわかりませぬが」
「しかしどちらにしろじゃな」
「織田家は関所を築く必要がそもそもありませぬ」
それで織田家は関所を設けなくともいいというのだ。
「尾張の東には我等がいます」
「それで関はよい」
「そうしたこともありましょう」
「そうじゃな。それぞれの家の事情がある
「はい」
榊原は家康の今の言葉には謹言に頷いた。
「そういうことでありましょう」
「当家には当家の事情がある」
「では」
「忍の数も増やしたいが」
「それでしたら」
服部が応える。
「伊賀だけでなく甲賀も用いられますか」
「甲賀者もか」
「そうされてはどうでしょうか」
「伊賀者ではないのか」
「それがしも推挙したいのですが」
だが、だとここでこう言う服部だった。
「ですが」
「それはできぬか」
「今の伊賀は百地家が牛耳っておりますが」
服部はこの家の名前を家康に述べた。
「伊賀にいた時から妖しい家でありまして」
「忍ならその素性はわかりにくいのではないのか」
「とりわけです」
「とりわけとな」
「忍の中でも奇怪なのです」
「奇怪!?」
服部の今の言葉に家康も眉を顰めさせる。
「御主がそう言うとは」
「まさに怪力乱神です」
服部は今度は儒学の言葉を出してきた。
「そうした類の怪しげな術を使います」
「妖術か」
それを聞いた鳥居が述べた。
「それであるか」
「そうやも知れませぬ」
「忍の者は妖術は使わぬな」
「我等が使うのは忍術です
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ