第十三話
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必要だった。
エルシャンは無意識に胸に沸々と湧き上がる感情で、その穴を埋めようとする。それは怒りと憎しみ。そしてその二つによって導き出される生きる目的は復讐。
復讐心に溺れ戦いに耽れば、少しは正気が保っていられる気がした。それが既に狂気の末の発想だとも気付いている。
エルシャンは立ち上がった。
「462機動艦隊は振り切ってワープに突入できますか?」
だから冷静に狂わなければならない。戦い続けるためにも復讐を遂げるためにも……
『不可能です』
「ならば自爆を指示」
戦闘機を出撃させられない航宙母艦など宇宙の案山子に過ぎなかった。制圧されて航宙母艦の高度AIが乗っ取られるならば自爆するしか手段は無い。
『了解。自爆を指示します』
同様に出撃中の200個艦隊の内、1/10を超える23個艦隊へ自爆への指示を出す必要があった。
「【敵性体】の攻勢が強まっているが理由は?」
僅かな間に第1211基幹艦隊の防衛宙域の50箇所へのポイントに【敵性体】の出現が確認されている。
明らかに何らかの目的を持っての行動と考えざるを得ない。
『不明です。ただしフルント星陥落と同時に、前線が混乱状態に陥っています』
フルント星の各基幹艦隊がパイロットを失い無力化されたが、第二渦状枝腕(サジタリウス腕)方面軍に所属する基幹艦隊は2000個に達する。
確かにフルント人パイロットの喪失は大きな戦力ダウンであり、やがて戦線を維持するの支障をきたすだろうが、少なくとも数的には大きな戦力が減少したわけではない。ならば今回の【敵性体】の大攻勢は、フルント星の侵略が、方面軍全体戦力低下。また士気に影響が出る好機と判断する知性を備え、情報を確保していたと思われる。
「……そうか、そうか、お前等が意思を持ってフルント星を滅ぼしたなら、それで良い。これで俺はもっとお前達を憎める」
エルシャンは笑った。嬉しそうに、心の底から嬉しそうに、涙を流しながら狂気と共に哄笑した。
機動艦隊を収容したシルバ6はワープを繰り返し方面軍本部のあるクラト星系へと向かう。
最大1000光年の距離をワープ可能とは言え、連続ワープは不可能でありインターバルを挟みつつ8000光年に3日間を要する。
「新型機開発計画ファイルにあったパイロット強化用ナノマシーンの生産は?」
『ファイル内に製造法が存在するため、艦内の製造プラントによる製造は可能です。ですがパイロット強化用ナノマシーンは被験者への副作用が強いと判断され──』
「構わない。製造を開始してくれ」
パイロット強化用ナノマシーン。
パイロットの神経組織へ入り込み各神経組織の伝達速度を数十m/秒程度から数百m/秒へと引き上げ、更にシナプス間の神経伝達物質受容体の感度を向上させる。
効果は一時
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