第十三話
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調中断のために全滅しました。それ以降フルント星との通信全てが途絶しております』
「馬鹿な! すぐに第二渦状枝腕(サジタリウス腕)方面軍本部との連絡を取れ」
『ただいま方面軍司令部より連絡が入っています。つないで宜しいでしょうか?』
こちらから連絡を取る前に、本部からの連絡がある。エルシャンの中の嫌な予感は更に大きくなった。
「すぐにつないでくれ!」
『トリマ少佐。緊急事態につき挨拶は省く』
スクリーンに映し出されたのは、方面軍副司令長官コントバル中将。本来、少佐如きへの連絡に顔を出すはずの無い大物がしかも挨拶を省くほどの緊急事態。頼むから嫌な予感が外れていてくれと祈るが、副司令長官の口から出たものは、最も聞きたくない言葉だった。
『トリマ少佐。君の母星であるフルント星を含むイルヌ星系内の惑星への【敵性体】への侵略が確認された。脱出に成功した生存者は未だ確認されていない』
「そ、そんな……」
【敵性体】の可住惑星への侵略。これは全生態系の滅亡を意味する。
つまり愛する全ての人たちが星ごと滅んでしまったという何の疑いすら挟む事の出来ない事実。
それは7歳からパイロットとして【敵性体】と戦い続けたエルシャン自身が嫌という程分かっている。
『【敵性体】は浸透突破作戦で大艦隊で前線を潜り抜けると──』
胸の真ん中を大きく抉られて穴が開いてしまったかのような喪失感。嘆く事も喚き散らす事も出来ないた虚無感。
その後エルシャンは何も言葉が出なかった。何も言葉が耳に入らなかった。
スクリーン越しに状況を説明し続ける副司令長官の言葉にただ機械的に頷くだけだった。
『──現時点をもって少佐は准将へ特別昇進。第1211基幹艦隊司令官に任ずる。出撃中の各機動艦隊を回収後シルバ6は方面軍本部に帰還せよ……准将……いや以上だ』
副司令長官が返事を待たず通信を終わらせると、エルシャンは膝から崩れると床に手を突いて激しく慟哭する。
「何故だ! 何故だ! 何故だ! 何故だっ!!」
幾ら叫んでも、父が母がウークがベオシカがムアリがネヴィラが、そしてもうじき生まれるはずだった息子が死ななければならなかった理由が分からない。
それを探し出し少しでも納得しなければ頭が度にかなってしまいそうだった。
しかし理由なんて何処にも無い。
二度も人生の全てを奪われれば立ち上がれないほどに心が折れる。このまま死んでしまいたいという気持ちにも陥る。
だが自分が死んでしまえば、もう誰もフルント星の事を、フルント星に生きていた人たちの事を憶えている人間が居なくなってしまう。それだけが今のエルシャンにとって決して譲れない生への執着の理由。
『トリマ司令。帰還中の462機動艦隊が敵艦隊に補足されました』
心に開いた穴を塞ぐべき何かが
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