第22話 沈む心、甦る決意(3)
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「ん……」
「あっ、純吾君。 大丈夫? 体、痛い所ない?」
意識を回復したばかりの純吾の目の前いっぱいに、心配そうな表情のすずかの顔が広がった。突然の光景に、ちょっと驚いてしまう。
心配そうな彼女の声と共に、周りでどたばたとした音が聞こえてくる。けれども、目の前はほぼすずかの顔に占拠されているため、その様子を見る事ができない。
なんで彼女がそんな表情をしているか、周りや自分がどうなっているかも分からない純吾は今、自分が彼女の膝に頭を置いていると知った。
慌てて体を起こそうとするが
「ダメッ! ……まだ、こうさせてほしいの」
くしゃりと、悲しそうに顔を歪めたすずかに押しとどめられた。その彼女の反応も分からない純吾は、言われるままに頭を戻し、代わりに彼女に聞いてみる。
「どうして、ジュンゴは……?」
「あぁ。それなんだけどね」
悲しそうな顔が、今度は苦笑に変わる。くるくると表情の変わる彼女に、さらに詳しい事を聞こうとした純吾の耳に、その原因が聞こえてきた。
「このどろぼう猫がっ! 一度ならず二度までもジュンゴに破廉恥なもん押しつけてっ!! 純粋な純吾が汚れちゃったらどうしてくれるのよっ!」
「にゃーっ! そん時はちゃんとシャムスが責任とるにゃ! 心配しにゃくとも、さっき『ずうっと一緒』ってジュンゴにゃんの許可は「んなの無効に決まってるでしょうが!」」
ぎゃーぎゃー、ごろごろ、どたんばたん。
先程の喧騒が、今度ははっきりと耳に届く。どうやら、リリーとシャムスがまた喧嘩をしているようだ。自分は何かの形でそれに巻き込まれたんだな、と純吾は当たりをつける。
原因が分かった所で、彼女たちの事が心配になった純吾は、喧嘩を止めようとまた頭を起こそうとする。それを、今度はすずかとは違う手が止めた。
「やあっと、起きたわね。この……バカジュンゴ」
アリサだ。人さし指で純吾の額を押し、小さな声で憎まれ口を叩きながら彼が起き上がるのを止めた。
彼女の頬もまた、すずかと同じように赤く、涙が伝った跡が残っていた。
「……どうして、泣いてるの? アリサ」
「っ! このバカ!! 全部あんたのっ、所為で、しょうが」
顔を真っ赤にして、こみ上げてくるものを我慢しながら、怒ったようにアリサが言った。
彼にとっては突然の事に、純吾は目を白黒させた。
そして、唐突に思い出す。シャムスを治療した後から、目の前がずっと霞がかったかのようで。彼女の笑顔を見た途端、あの光景が――前の世界の様々な場面が写り込んで来て、そこから……
「そっか……。言っちゃたんだね」
はぁ、と天を仰いで嘆息した。
純吾は自分の悩んでいる事、特に前の世界での経
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