第22話 沈む心、甦る決意(3)
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の言う事なんて無視しちまえばいい。あいつに従わなくたって、あたしたちは生きてけるだけの力はある。
……それに、辛いってんなら逃げちまってもいいじゃないか。少なくともあたしは、そんな顔のフェイトをこれ以上見たくないんだよ」
そう言い終わった女性はもう、笑っていなかった。ただひたすらに、少女の意思を聞こうと、目をまっすぐに少女へと向ける。それに圧倒されたかのように、少女は目を逸らし、首をうなだれさせた。
沈黙が、2人の間をぐずぐずと流れる。
「……それだけは、ダメ」
やがて、先ほどよりも小さく、今にも消え入りそうな声で、少女が口に出す。
「それだけは、ダメ。ジュエルシードの回収は、“母さん”の願いで、私に期待してくれていることだから……。だからこれだけは、裏切りたくない。例え今回みたいなことがこれからも起こったって、これだけはやり遂げたいの」
無理やり絞り出すように、震え、時には小さく啜り泣きながらも、少女はそう言った。
「はぁ……」
それを聞いた女性は、先ほどとは違うため息を漏らす。そして、目の前で震える少女を再び抱き寄せた。
「分かった、分かったよ、フェイト。本当は諦めてほしかったんだけど、そこまで言われちまったらあたしの方が諦めるしかないよ」
少女を抱き寄せ、安心させるかのように背をさする。酷くゆっくりとだが、少女の震えが小さくなるのを、女性は肌越しに感じた。
「あたしも一緒にやるよ。フェイトが知った悲しみを、あたしも一緒に向き合うよ。
あたしゃバカだから、上手い解決方法なんて知らないから……。せめて、少しでもフェイトが悲しまないで済むようにしたいんだ」
「だ、ダメだよアルフっ。これは私が決めた事だから、アルフまでこんな気持ち知ってほしくなくて、だからその、えっと」
慌てたように、少女が女性から離れる。それを見てもう一度、今度は苦笑するように笑う女性。
「ならやっぱり、こんなこと止めてほしんだけどねぇ」
「うっ……。ごめんね、アルフ」
「はいはい、いいって事さね。あたしとフェイトは一蓮托生って奴じゃないか。付き合うよ、トコトンまでね」
より一層慌て始めた少女を安心させるかのように、もう一度少女を抱き締めなおす。
ぽんぽんと、背中を優しくなでる感触と、肌に伝わる女性の温もり。少女――フェイトは泣いていた顔を少しだけ微笑み、彼女への謝意を伝えた。
「ぅん……。ありがとう、アルフ」
その言葉に、小さく笑って、女性――アルフは返した。
「どういたしましてさ、フェイト」
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