第22話 沈む心、甦る決意(3)
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行ったというのだから。
けれども、彼女たちの返してくれた答えはどうだ。こんな自分を許してくれると、信じると言ってくれた。信じてくれる人がいるという事は、純吾にとってとても嬉しい事だった。
「そうだっ」という声と共に、ぽんっ、と軽く手を打つ音が聞こえた。その音に純吾は顔をあげると、いいことを思いついたと言わんばかりのなのはがいた。
「えっとね。さっきみんなで一緒にって言ったんだけど……、これって本当の意味でみんなで一緒だなぁって。
さっきまでは悩んでいたのって私達だけだと思ってたけど、純吾君も言えない悩みがあって、それをどうにかしたいって思ってるんだなぁって、今やっと気が付けて。
ええっとね、だからこれから、本当の意味でもう一度一緒に頑張って行けたらなぁって――」
咄嗟に思いついた事なのか、慌てたように手を振り、口に出しながら自分の中の考えをなのははまとめようとしている。
その中の言葉の一つに、純吾ははっとしたような顔になった。
「もう一度、一緒に」
純吾は噛みしめるようにゆっくりと、その言葉を口にした。突然声をあげた純吾に、なのはは少し不思議そうな顔をして話すのをやめる。
「もう一度……もう一度、一緒に頑張っていいの? ジュンゴは、もう一度」
“もう一度”
それは、あの世界では許されなかった言葉。一度の失敗は即自分の死を意味する極限の世界で、口にする事ができなかった言葉。
「勿論だよっ! だからこれから、一緒に頑張っていこう、純吾君っ!」
そう言って差し出されるなのはの手に、純吾はやっと、やっと自分はこの世界の住人になれたんだと、そう思った。
あの世界で見たこと、自分が行ってきたことへの恐怖に一人で震える必要はない。もう一度、そう、もう一度人を心の底から信じてもいいのだ、と。
恐々と、伸ばされた手に純吾は指を伸ばす。
軽く指先が触れあった。微かに伝わる温もりに、驚いたかのように手を引っ込める。
なのはの顔を見た。彼女は少し悲しげな顔をしたが、すぐに真剣な顔で手を差し伸べてくれる。
先ほどよりも、少しだけ近くなったなのはの小さな手。それをじっと見つめた純吾は、意を決したように力強くその手を握った。
お互いの体温が伝わるのが分かる。握った手を伝って視線をあげていくと、なのはは溢れんばかりの笑顔を浮かべているのが見えた。
「ん…、これから。これからも、よろしくお願いします」
だからそう言った純吾の顔にも、いつもより少しだけ嬉しそうな笑みが浮かんでいた。
――同日夕方、とあるマンションの一室
「ただいま…」
ガチャリという重い音と、少女の声がその部屋に響く。太陽がかげ
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