第22話 沈む心、甦る決意(3)
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験に基づくものは、極力表に出さない様に努めてきた。
前の世界で見た、崩壊する街、跋扈する悪魔、そして、それらに追い詰められ段々と狂い、或いは本性をむき出しにしていく人。自分の悩みを話すという事は、それらを打ち明けなければならないということに他ならない。
そんなもの、この平和な世界では知る必要が無い。仲が良く、人としても十分に信頼のおける家族や友人に囲まれ人の善性を信じて育って彼女達に、そんな人の汚い所を知ってほしくないと思っていたのだ。
その抑えが、今回の襲撃によって耐えきれなくなった。
純吾は目の前の少女達に謝りたくなった。知らなくてもいいものを、彼女達は知ってしまった。きっと、不快な思いを、下手をしたら人に対して不信感を持ってしまったのではないだろうか、そんな後悔ばかりが頭をよぎる。
だから「ごめんなさい」、そう言おうと口を開け、「ご」と言った途端
ぎゅーーーっ
思い切り頬をつねられた。それも、普段冗談でやっている時とは比べ物にならない程の力で。
「あ、アリしゃ……。いひゃいよ」
少々涙目になりながら、純吾は自分の頬をつねり上げている少女に訴える。アリサはそれに、ふんっ、と拗ねたように鼻を鳴らして答えた。
「謝ろうとするんじゃないわよ。確かに、あんたのあれ見て気分は最悪よ。突然目の前で泣き始めるし、話聞いてたらこっちまで気分が塞ぎこんじゃうんだもん」
「あぁ、また思い出しちゃった」と、アリサは何かをごまかす様に目を擦る。そして今度ははっきりと怒った口調で、一気に感情を吐露した。
「……けどね、一番気分が悪くなったのは、私達に何の相談もなかった事よっ!
確かに、あんたが前どうしてたかなんてよく分かんないし、何を思ったかなんてもっと分かんないわ。
だけど! あんたが今! 今その事で悩んでたり、傷ついたりする事は私達でも何とかできるかもしれないの! 克服は無理でも、少しでも支えてあげる位はできたはずなのよっ! それなのに勝手に一人で抱え込んで、我慢できなくなってそんなもの見せられるなんて、ほんっと最悪だわ!!」
そう言い切ると、アリサは頬をつねっていた手を乱暴に離し、腕を組んでそっぽを向いた。自分の感情をここまで直接的に相手にぶつけた事が無かったのか、純吾から見える彼女のうなじは赤くなっていた。
「ふふっ。要するに、アリサちゃんは少しでも純吾君の力になってあげたかったのよ」
忍と恭也がいつの間にか近くに立っていた。床に座り込んでいるすずかと、そこに膝枕されている純吾を見ながら、ニタニタと笑っている。
彼女の言葉に、組んでいた腕を急にあたふたとアリサはさせ、浮かべる笑みの意味をなんとなく察したすずかは、赤くしていた顔を更に赤らめさせた。それを見て「あら
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