第21話 沈む心、甦る決意(2)
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女の手を包んだ両手を、彼女の生をより強く感じたいと、祈るようにして自分の額にあてた。
そして、天上へその祈りを届けるかのように、彼女へと言葉を捧げた。
「ありがとう、シャムス。生きていてくれて。
シャムスが助かってくれた、生きていてくれただけで、ジュンゴは嬉しい。この世界の縁を、ジュンゴの仲間を、助ける事ができたって。そう、思う事ができた。
……本当に、ありが、とぅ。もう、絶対に誰にも傷付けさせない。
これからは、ずうっと一緒だよ。ずうっと、ずうっ…と、いっ、しょ……」
リリーは、彼女の愛してやまない契約者が、この場にいるもう一匹の仲魔に縋りつくようにして、泣きながら「ずっといっしょ」と繰り返しているのを見ていた。
口元は緩んでいるが、眉根はきゅっ、と寄せられている。純吾の心が折れることなく済んだことによる安堵と嬉しさが半分、仕方ないとはいえ自分とは違う仲魔――それもぽっと出の癖に、油断ならない――に縋りながら「ずっといっしょ」などと泣きながら言っている事への嫉妬半分の、何とも言えない複雑な感情が彼女を支配していた。
「あんな絵を見せられて黙って我慢しているなんて、少し大人になったんじゃない?」
やや皮肉交じりの苦笑が、リリーの後ろから聞こえてきた。振り返ると、いつの間にか忍と恭也が並んで立っていた。
さらにその後ろでは、ノエルとファリンの姉妹が泣きじゃくる少女たちを懸命な面持ちで慰め、あやしているのが見える。
「今のジュンゴには全部、全部の悲しい事を涙と一緒に流す事が必要だわ。ジュンゴのした約束をこれからも守れるようにするため、そして、ジュンゴ自身の心を守るためにね。
……だから、大変っ! ひっじょーに、忌々しいけどっ!! ジュンゴが落ち着くまでは我慢するしかないの」
より強く嫉妬の感情を表に出しながら、本当に忌々しそうに話すリリーに2人は苦笑した。
「まぁ、気持ちを切り替えるには、感情を思い切り表に出すのが良いだろうな。
……しかし、純吾があんな事を抱え込んでいた事に気が付けなかったとは。師匠と言われて、天狗になっていたのかもしれないな」
心持ち下を向いていた恭也が、悄然とした様子で言う。“守る”という事に関して純吾を導く立場にいる恭也が、その心の傷を見つける事ができず、守る事ができなかった。これほど彼を傷つける事はない。
「それを隠したのはジュンゴの意思よ。知ってるでしょう、ジュンゴが身内だと思った人の為なら、自分の犠牲なんて省みない性格だっていうのは。
……心配させたくなかったのよ。自分の過去を、そこで起こったことを必要以上知られたら、絶対気を遣われるって。ジュンゴはただ、この平和な生活を守りたいだけだったから」
「はぁ…。だからって、
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