第21話 沈む心、甦る決意(2)
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る。紅玉のような瞳が、彼を見ていた。先程まで爛々と生気に満ちた輝きを放っていたその瞳は涙に濡れ、先ほどとは全く違う光を宿していた。
「あのにゃんたらシードを抜かれた後、シャムスはにゃにも喋れにゃかった。体の外は雷に打たれて熱くてビリビリしてあちこちが耐えられないくらい痛かったし、魔力が中から暴れまくって、体がはちきれそうになってたからにゃ」
手を握ったまま拙い言葉遣いで、しかし必死になってシャムスは話す。
「そんな猫、普通にゃら助からにゃいってほっとくにゃ。まだこの家に拾われる前は、少しでも傷ついた他の猫はそうやって生き残っていたのを、シャムスはにゃん回も見てる」
手がきつく握られた。彼女の話を聞いていた純吾が、自身のせいでそんなにも彼女が辛い事を体験させてしまったのだと思い、無意識の内に力を込めたためだ。
自分の手を強く握られたことに、シャムスは少しだけ顔をしかめた。しかしすぐにそれを収めると、「けどっ!」と声をより大きくして、今後は自分から握り返した。
「ジュンゴにゃんは助けてくれたにゃ。あんな死にかけの猫に、『頑張って』って声をかけてくれた! 自分もふらふらだったのに、シャムスを必死になって治そうとしてくれたにゃ!
……だから、そんにゃ顔をしにゃいで。シャムスはこうやって救われたって思ってるのに、ジュンゴにゃんがそんにゃ悲しい顔をしてるのは、とっても辛いにゃ」
その言葉に、純吾は自身も雷に打たれたかのような感覚を味わった。
自分は一体何をしていたのだろうか? ただ自らの殻に閉じこもってばかりで、彼女たちの事を、本当に辛い思いをしたはずの彼女たちがどう思っているかを考えた事はあっただろうか?
目の前の暗闇が、急に晴れたかのような気がした。暗闇が晴れた目に真っ先に飛び込んでくるのは、宝石の輝きを持ったシャムスの瞳。しかし今のそれは涙にぬれて、小さな瞬き程度の光しか持っていない。
「……泣いてるの、シャムス?」
「ふんっ。ジュンゴにゃんが泣かすんだから、しょうがにゃいにゃ」
純吾の問いかけに、照れ隠しか、少しむすっとした態度でシャムスは答える。そんな様子が可笑しくて、くすっと小さく純吾は笑った。
「ん…。ごめんね、シャムス。それと」
そう言って、彼の片方の手を握っていたシャムスの手を両手で包みこんだ。
包み込んだ彼女の手は、人間大の手であるというのに、ビロードのような滑らかな紫の毛に覆われ、手のひらに肉球のある猫の手だった。
しかしその手は柔らかく、そして、温かい。
彼女は今、ここで、確かに生きている。
彼女の手から伝わってくるぬくもりに純吾は、胸の奥から何か熱いものがこみあげてくるのを感じた。
彼自身気が付かないうちに床に膝立になる。彼
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