第21話 沈む心、甦る決意(2)
[1/7]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「皆を……仲間を奪っていかないで!!」
今まで見た事のなかった、純吾の心の奥に沈澱していた過去のトラウマ。それを前にして、誰ひとりとして動く事ができない。
忍達大人は、幼く見える彼が抑え込んでいた事柄のあまりの大きさにショックを受けていたためからだ。
いつものほほんとして、同年代よりも圧倒的に成熟した人格を備えていた彼。悪魔を従え、見ず知らずのはずの家族を助けてくれた彼の事を、忍達は知らず知らずのうちに強い人間だと思っていた。
未曾有の災害を乗り越えてきたのだから、それに見合う強さを持っているはずだと。
しかし、災害を経験したからこそ、心に深い闇ができるのではないだろうか? それを、完全に失念していた。
アリサとなのはは、彼女達が理解できない程の悲しみを発露する彼の姿に心を酷く揺さぶられ、かき乱されたため。
殊更感受性の強く、そして今回彼がこうなった一因でもあるなのはは、彼女も知らないうちに涙を流しながら彼の姿を見ていた。
知らなかった。いつものほほんとした雰囲気の彼が抱えていたものを、どんな思いを持ってなのは達の手伝いをしていたのかを。
そしてあの少女と対峙した時。どんな思いで、彼が気絶した自分の為に駆けてくれたのかを。
はらはらと頬の上を熱いものが流れ続け、心の中に溶岩のように熱く、今にも体の外に吹き出しそうになる思いが湧きあがってくる。しかしその荒れ狂う感情を前にして、どうしても体を動かす事だけはできなかった。
そんな中、すずかが荒れ狂う感情を何とか抑えつけながら、彼のもとに行こうと必死に硬直した体を動かそうとしていた。
彼の悩んでいた事を少しだけ知っていたというのが大きかった。ここまで思い悩んでいたとは彼女自身予想していなかったが、彼が何かしら抱えているという事に対する心構えが事前にできていた。そして自分がどうにかしなければ、という強い使命感を覚えていたからだ。
今までくすぶり続けていたその使命感が、今明確に彼女の中に生まれおちた。
だから、彼女は彼に向って声をかけようとするが
「ジュンゴっ!!」
すずかの隣を、一つの影がまろびでるようにしながら純吾のもとへ駆けた、リリーだ。
僅かな距離を駆けた彼女は、走った勢いもそのままに、純吾を包み込むようにして抱きしめる。そして彼が落ち着くように背中をさすりながら、優しい声音で赤子に言い聞かせるように彼に語りかけた。
「ごめん……、ごめんねジュンゴ。
こんなにもジュンゴが悩んで、苦しんでたんだって、私気が付けなかった。
そうだよね、ジュンゴは優しいんだもん。あの世界でできなかった事が、ここでならできるかもしれないって頑張ってたのに。二回も上手くいかなくって、動く事ができなかったって、だから
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ