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蒼き夢の果てに
第4章 聖痕
第34話 山の老人伝説
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して、湧き上がる歓声。この瞬間が、最後のルーレットのテーブルが閉められた瞬間であった。

 タバサの前にうず高く積まれたチップの山に、更に先ほどの勝利の分が加算されて行く。そう、現在のテーブルの上には、最早身体の小さな彼女では、テーブルの上のチップを全て見る事は不可能でしょう、と言うぐらいのチップで溢れかえっています。

 そうして、最初には存在していなかった黒のチップ。黒のチップは金貨に換算して百枚に相当するチップなのですが、この黒のチップがどう見ても百枚以上は有るはずですから、一晩の負けドコロか、このチップを全て現金化すれば、カジノ自体が簡単に潰れるのは間違いない状態だと思いますね。



 軽く、伸びをするような仕草の後、周囲の気を探る俺。大丈夫。剣呑な、殺気に似た気は何処からも発せられる事はなし。

 ならば、そろそろ頃合いですか。相手……カジノ側が動き出す前に、次の手を打つ必要が有るでしょう。
 俺は、辺りの様子を伺いながら、そう思った。ただ、俺とタバサの周りには、未だ危険な雰囲気を感じてはいないのですが。

 ……未だ、カジノ側としては事を荒立てずに、バクチとしての勝負で事を収めようと考えている、と言う事なのでしょう。
 おそらく、タバサやそのエスコート役の俺の見た目が子供ですから、嘗めて掛かっていると言う事だとは思いますが。
 それに、この香の効果について、かなりの過信が有る可能性も有りますし。

 実際、精霊と契約を交わして、その精霊を連れ歩き、常に自分達の周りだけ新鮮な空気で守りを固めている、などと言う方法はこの世界の常識の外側に存在しているはずですから。

「さて。そうしたら、そろそろ休憩にしようか」

 それならば良いでしょう。取り敢えず相手が動かないのなら、こちらの方から動き易い状況を作るだけですから。

 そう思い、それまで、完璧にタバサのエスコート役に徹していた俺が声を掛けた。
 もっとも、見た目はタバサの後ろに立つだけのエスコート役なのですが、イカサマと言う部分に関しては全て俺の所業なのですが。

 それに、見た目が派手なタバサが人目を引いて、小細工は俺が行うと言う方法は、ある意味、理に適っているとは思いますけどね。

 それまで俺の方を顧みる事など無かったタバサが、俺の方を向いてひとつ首肯いた。
 その瞳には、普段の彼女と変わらず理知的な光が宿り、表情の方も、普段通りの透明な……ある意味、ギャンブラーに取って必要な表情を浮かべています。
 そう。バカみたいにルーレットに勝っていても冷静さは失っていない、と言う事です。

 確かに、彼女が発している雰囲気からそう察しては居ましたが、実際に顔を見るのと、見ないのとでは安心感が違いますよ。
 それに、このタイミングで俺
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