第4章 聖痕
第34話 山の老人伝説
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扉を開くと、其処にはタバコと酒の臭い。そして、やたらと甘ったるい香り。それに、眩い……明滅する光に溢れた退廃的空間が目の前に現れていました。
そう。地下に存在するに相応しい世界。ある種類の人々に取っては天国と言うべき空間。
しかし、俺に取っては地獄と表現すべき世界が目の前に口を開けていたのです。
そして、次の瞬間。人々の喧騒と何故か走り出したくなるような軽快な音楽。更に、これこそがカジノに相応しい、勝者と敗者の発する……不快な陰の気が俺とタバサを包み込んだ。
何故かここに居るだけで、確実に人を狂わせる。そんな気がして来るかのような場所。其処は、俺にはそう感じられる世界で有ったと言う事です。
一応、周囲をざっと見渡した感覚で言うと、広さとしては魔法学院のアルヴィーズの食堂よりも広いように感じます。更に、歌やダンスを見せる為の舞台まで備えた、地球世界に存在する……ドラマや映画などで良く描写される高級カジノと言う雰囲気の場所、と説明したら判り易いですかね。
但し、流石にスロットマシーンの類は見当たらないのですが。
舞台の上ではふわふわのロングスカートをひらめかせて、黒のストッキング、白いペチコートをカジノの客たちに魅せながら、一列に並んだ女性たちが軽やかな音楽に合わせてハイキックを繰り返す。
成るほど。このダンス・パフォーマンスの音楽が、最初に感じた妙に走り出したくなる音楽だったと言う事ですか。
しかし……。
……赤いレンガで作られた風車に、一列に並んだ踊り子たち。そして、この特徴的な音楽に合わせたハイキックを取り入れたダンス。
ここは二十世紀初頭のフランスのモンマルトルなのでしょうかね。
……いや。そう言えば、ここはリュティス郊外の小高い丘でしたし、あの丘には昔、女子修道院が有ったはずですか。
取り敢えず、俺では月までは連れて行く事は難しいですが、監獄ぐらいなら簡単に連れて行く事も出来ますよ。
もっとも、そんな乱痴気騒ぎを行う監獄が有るかどうかは、定かでは有りませんが。
【シノブ。大至急、タバサと貴方の周りを新鮮な空気の玉で包むのです】
一瞬、下手くそなボサノヴァのリズムを刻んで月まで行き掛かった俺の意識を、見事地球の引力により引き戻す事に成功したダンダリオン。流石に第一宇宙速度までは達して居なかったらしい。
おっと、イカン。ここはカジノで有って、二十世紀半ばのキャバレーでは無かったな。
……って言うか、ショー・ビジネスと言うジャンルに成るんじゃないですか、ここは。
カジノの客たちが発する、俺の精神衛生上、あまり宜しくない気に当てられた……軽い酩酊状態に近いような感覚のと成った頭を軽く振りながら、周囲を更に細かく観察す
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