第4章 聖痕
第33話 赤い風車
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人の億万長者と、十人以上の自殺者を作り出す類の陰の気を撒き散らすカジノを放って置く事は出来ません。
知らないのなら未だしも、知って仕舞ったからには。
自殺者の霊は、仲間を欲するタイプの性質の悪い霊が少なく有りませんから。
それで無くてもこの世界の一般的な魔法は、陰の気が強い魔法。そこに自殺者の霊まで増えて行かれると、益々、世界に悪い流れをもたらせるように成りますから。
自殺者の霊が仲間を増やす為に、陰の気に囚われた人間を仲間に引き込む。つまり、更に、自殺者を増やして行き、その増えた自殺者の霊が更に、陰気を発生させ、気の循環が滞り、世界自体に歪みが発生する。
その歪みを辿って、異界より、更に大きな災厄が顕われる。
流石に、こんな状況を作り出させる訳には行かないでしょう。少なくとも、俺の知っている範囲内では。
そんな事を考えながらゆっくりと前進して行き、上に向かう階段の前で少し立ち止まる俺。
……そして、俺の右隣に立ち、少し訝しげに俺の方を見つめるタバサ。
同じように、少しタバサを見つめてから、その視線を在らぬ方向に向け、思考の海に沈み込む俺。
そう。普段通りのエスコートを行うべきか、それとも、異質な場所の対応用のエスコートを行うべきなのか。
普段通りならば、昇りの階段の場合はタバサに一段か二段先に進んで貰って、不意にバランスを崩した場合に備えるのが当たり前。まして、今日の彼女は履き慣れていないヒールの高い夜会靴を履いています。
しかし、今回は未知の、それも違法カジノへの潜入任務と成りますから、むしろ俺が先に立って進むべきですか。その方が、咄嗟の際にも、最初に被害を受けるのは俺の方と成る可能性が高く成ります。
そう思い、普段とは違い一歩先に歩み出した俺の左手を取り、普段とは逆の位置、即ち俺の左側にタバサが居ると言う立ち位置に変えられて仕舞う。
そして、俺の左側から少し上目使いに俺を見上げた後、何も言わずに階段の先を見つめた。
……やれやれ。
俺は、軽く左手でタバサの背中……と言っても、腰の辺りを軽くフォールドするような形を取った後、タバサの方が一瞬早く足を出すような形で階段を昇り始める。
……って言うか、正面から見られた時は、この形が一番綺麗に見えるはずです。
普段は、見栄えよりも実用本位。俺は矯正された右利きですが、それでも矢張り右手の方が器用ですし、即座に対応出来るのも右手の方です。まして、日本で生活して居ましたから、車は左側を走っています。つまり、右側……歩道側に護るべき存在を置くのが基本だったのですが。
ゆっくりと一段ずつ昇って行く俺とタバサ。地下から地上に辿り着くが如き昇りの階段だからなのか、それとも、少し触れ合っている彼女から感
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