第4章 聖痕
第33話 赤い風車
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……ゆっくりと意識が覚醒して行く。
……確か、モンモランシー作製の劇薬を口にした瞬間に意識が遠のいて行って……。倒れてからどれぐらいの時間が経ったのでしょうか。
目覚めてから最初に思ったのは、その事についてでした。
未だ、まどろんで居たがっている瞳を無理に開いた先に映る見慣れた天井。そして、最近、良く寝かされるベッドの感触。
但し、眠りに就く時は、床に倒れ込むばかりなのですが。
それでも、ここ。つまり、タバサのベッドの上に寝かされていると言う事は、彼女が運んでくれたのでしょう。
そう思い、少し上半身を起こす俺。室内に差し込んで来ている陽光から察すると現在の時刻は午前中。確か、倒れたのが午後……。学院の授業が終わった後ですから、最低でも半日は眠っていた事に成りますか。
そうしたら、彼女の現在の居場所は……。
……って、直ぐ隣。ベッドの脇に椅子を用意して、そこに座って本を読むタバサの姿が有りました。
横で眠る俺を気にする訳でも無く、ただ、和漢に因って綴られた文章をその蒼い瞳のみで追う少女。
いや、そう装っているだけですか。少なくとも、彼女の発して居る雰囲気がそれを物語っていますから。
俺が目を覚ました事に気が付いたタバサが、俺をその瞳の中心に映す。何時もと変わらないメガネ越しの、温かいとは表現し辛い視線に別の感情を乗せて……。
そうして、
「おはよう」
……と、普段通りの雰囲気で告げて来た。
まるで何事も無かったかのような何時も通りの朝の挨拶。一カ月半ほど続けられて来た日常の一コマ。
「おはようさん」
俺の方もそう普段通りの朝の挨拶を返す。それに、あの妙な液体でひっくり返った割には、気分は悪くないみたいですから。
但し、何故かあの液体の見た目や臭い。それに、味に関しても曖昧な記憶しか残っていないのですが。
倒れたショックに因る一時的な記憶の混乱……などではなく、おそらくこれはトラウマ。心的外傷性の物と推測出来る記憶障害だと思いますね、これは。
……って、何を冷静に考察しているのでしょうかね、俺は。
それに、今はそんな事よりも、もっと知りたい事が有りますから。
おっと、その前に。
「わざわざ、運んでくれて、その上、ベッドに寝かせてくれたんやな。ありがとうな」
質問の前に、御礼が先ですか。そう思い、先ずは和漢に因って綴られた書物から、俺の方に視線を移した蒼き姫にそう感謝の言葉を伝えて置く。
俺の言葉に、無言で首肯くタバサ。メガネ越しの視線も。そして、仕草や雰囲気も何時も通り。
但し、ほんの少しの安堵のような物を発して居るような気がします。
それに、少しの違和感が有るのも事実ですね。
「そうしたら……
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