第九十話
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第九十話 独裁者の結末
その無数に増えたパーマでサングラスでシークレットシューズのおっさんであるが。何とここで互いに争いはじめたのであった。
「御前邪魔ニダ!」
「御前粛清ニダ!」
「あれっ!?」
小田切君はそれを見て首を傾げさせた。
「何かお互いに殺し合いをはじめましたよ」
「むう、そうか」
だが博士はそれを見て納得していた。
「そうじゃったか」
「どうして納得できるんですか?」
街の至るところで殺し合うおっさんのクローン達を見ながら博士に問う。
「当然じゃ。独裁者じゃぞ」
「はい、独裁者です」
「認められるのは自分だけじゃ」
だから独裁者になるのだ。独裁者とは強烈なエゴイストでもあるのだ。
「だからじゃよ。お互いに殺し合うのじゃ」
「そうだったんですか」
「あれじゃ。ザリガニじゃ」
博士は今度はその話にザリガニを出してきた。
「ザリガニ!?」
「ザリガニを大勢同じ所に入れていたらどうなる?」
「殺し合います」
それがザリガニの習性だ。ザリガニを飼う時はこれに用心しておかなければならない。ザリガニというのはかなり獰猛な生き物であるのだ。
「それと同じじゃ。しかもあいつは共産主義というか全体主義の中でも最悪の部類の独裁者じゃ」
「確かに」
その通りだ。まさに世界最悪の独裁者だ。
「殺し合うのも道理。うむ、いい実験になるな」
「実験なんですか」
「互いに争わない兵器を作り出すのも重要なのじゃぞ」
博士にしてみれば兵器が互いに争っては意味がない、そういうことだ。
「それを考えればあのおっさんはクローン兵器としては無意味じゃな」
「というか嫌がらせの役にしか立ちませんよ」
小田切君の指摘は当たっていた。
「あんな不細工なおっさん」
「嫌がらせか」
だが今の言葉は。博士にとってはツボであった。その言葉を聞いた塗炭に悪魔めいた邪悪な笑みを浮かべてきた。
「そうじゃ、それじゃ」
「それじゃってまさか」
「そのまさかじゃ」
小田切君の危惧は当たった。残念なことに。
「早速開発決定じゃ。そうじゃな」
またロクでもないことを考えだす。
「暴走族の集会やヤクザ屋さんの集まりの中に集団で殴り込ませてな」
「また凄い嫌がらせですね」
「何、時間が経てば殺し合いをして数を減らしてくれる」
今目の前でも殺し合ってその数が激減している。もうすぐ全員いなくなりそうだ。最後の一人も傷だらけで倒れてそれで終わりである。
「これはよいな。小田切君、よくぞ教えてくれた」
「やっぱりこの博士は何考え出すかわからないな」
後悔先に立たず、言った言葉はもう戻らない。小田切君は博士のろくでもない決定に顔を顰めさせるのであった。
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