第六十六話
[8]前話 [2]次話
第六十六話 教会の前で
六人は地図を見ながら夕方の八条町を進む。ここはごく普通の住宅街であった。
「ここにその人がいるのね」
「そうみたい」
華奈子は隣にいて地図を持っている赤音に答えた。
「それでその人との待ち合わせ場所の教会だけれど」
「ここね」
赤音は既に赤丸を押した場所を指で指し示した。
「ええと、八条分教会の前ね」
「教会!?」
皆それを聞いて目をしばたかせた。
「教会だったらすぐ目立つわね」
「そうよね」
赤音は皆の言葉に頷く。
「それだったらね。待ち合わせ場所には都合がいいわよね」
「そろそろだけれど」
美樹がここで辺りを見回す。
「何処にも教会なんてないわよ」
「そうよね。確かこの地図だと」
梨花が赤音の持っている地図を眺めながら辺りを見回して述べる。
「あそこよね」
「そうね」
春奈が彼女の言葉に頷いた。
「けれどあれって」
「教会じゃないんじゃない?」
華奈子はこう言って首を傾げさせた、見ればそこにあるのは瓦の屋根の大きな建物である。とても教会やそうしたものには見えない。
「道場じゃないの、あれって」
「そうよね、あれは」
美奈子も言う。
「どう見ても教会じゃないわね」
「けれど地図だとあそこよ」
それでも赤音は地図を見ながら皆に言うのだった。
「絶対に。間違いないわ」
「おかしいわね」
華奈子は腕を組んで言いだした。
「教会じゃないとしか思えないけれど」
「けれど見て」
美奈子はその教会の前を指差して皆に言う。
「もう誰か待っているし。あの人ひょっとして」
「あの人かしら」
皆何となくその人らしいと思った。
「おばちゃんとポポちゃんが紹介してくれた人って」
「多分そうね」
美奈子が華奈子に答えた。
「間違いないみたい」
「やっぱりあそこ?」
皆どうしても納得できず首を捻る。
「よくわからないけれど」
「そうみたいね。まあとにかく」
行くことにした。とにかく地図では間違ってはいないのだ。だとしたら行くしかなかった。こうして六人はそこに行くのであった。
第六十六話 完
2007・11・28
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ