第六十三話
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第六十三話 博士の余裕
小田切君達は今回の騒動に頭を悩ませている。しかし当の博士はというといつも通り悠々自適な有様であった。
「ふむ、美味いのう」
周囲にゴッキローチがたむろし住民を襲っている中で優雅に外の食事を楽しんでいる。異様に大きなステーキをフォークとナイフで食べている。
「やはりステーキは外じゃ」
「あのですね」
向かいに座る小田切君が博士に言う。彼も同じものを食べている。
「博士、あまりにも」
「ステーキがまずいのか?」
博士はこれがステーキへのクレームかと思った。
「このスペイン風のステーキが」
「ステーキはいいです」
分厚いレアのステーキはガーリックを利かしている。それと赤ワインまである。最高の組み合わせの一つであると言えるものであった。
「それ自体は」
「では何じゃ」
博士はステーキを口に入れながら問う。
「言ってくれ、是非」
「今の状況です」
小田切君が言うのはそれであった。
「目の前で人々がゴッキローチに襲われているのに。暢気にステーキなんて」
「んっ!?何かあるか?」
博士にとってはどうでもいいことであった。
「今何か」
「どうでもいいんですね、本当に」
「何ならあと百匹程作るが」
博士は実はわかっているのであった。
「それでどうじゃ」
「百匹もどうやって作るんですか」
「何、簡単なことじゃ」
博士はしれっとして小田切君に言葉を返す。
「ゴッキローチ培養液を人にかけてな」
「・・・・・・そんなのを発明していたんですか」
ゴッキローチをそうして増やしているのであった。今回も実にとんでもない話である。
「それで簡単に増やせるぞ」
「そうやって罪のない人を」
「罪?あるぞ」
しかし博士は言葉を返してきた。
「ちゃんとな」
「ちゃんとですか」
「わしとて実験に使う人間は決めておる」
決める問題ではないのであるが。
「それは安心せい」
「どうやって選んでいるんですか、それって」
「あとで見せてやろう」
ステーキを食べ終えワインを飲みながら優雅に述べる。
「まあゆっくりとな。今は」
「そうですか。何か不安ですけれど」
「大したことはないから安心せい」
実に信用できない言葉であった。この博士に安全というものは何の関係もないからだ。
「それではな」
「はあ」
程なく食事を終える。そうして博士に連れられてある場所に向かうのだった。
第六十三話 完
2007・11・21
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