第五十八話
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第五十八話 帝都の悪魔
「諸君!!」
博士はまたしても高らかに叫ぶ。
「安心せよ、このゴッキローチ達は人を殺さぬ!」
「殺さないってだけだろ」
「何されるかわかったものじゃないぞ、あれ」
「毒を移すだけだ!」
二匹に応えるかのように宣言する博士だった。
「その毒で一週間苦しみ抜く!たった一週間だ!」
「それって大変じゃないのかな」
「大変どころじゃないぜ、そんなの」
タロとライゾウはテレビの博士の言葉を聞いて話をする。その通りである。
「わしとしては些細な贈り物だが受け取ってくれ!それでは!」
何かボタンを押すとあの巨大ロボットが国会議事堂を破壊したうえで降り立ってきた。それだけで恐ろしい破壊活動であった。
「本当に壊したよ、あの人」
小田切君も国会議事堂破壊には驚くしかなかった。
「幾ら何でもこれは」
「皇居じゃないだけましなんじゃないの?」
「それは洒落にならないから」
タロとライゾウがここで最悪のケースを想定する。確かにそれは洒落にならないことである。国会議事堂も相当なものであるにしろ、だ。
「さらばだ!また会おう!」
「ああ!今日本は危機に瀕しています!」
何とか復活したキャスターがゴッキローチ達に襲われながらも叫ぶ。
「この危機からどうやって乗り切れば・・・・・・ぐわーーーーーーーっ!」
また噛まれるのであった。それから一週間彼は毒の苦しみにのたうち回ることになるのであった。恐ろしい痛みであったという。
「酷いな、これは」
テレビを見終わった小田切君は思わず呟いた。
「どうしようか」
「だからどうしようもないって」
「放置しておくしかないよ」
「そうなんだよなあ」
小田切君も二匹の言葉にこう返すしかなかった。
「結局のところは」
「暫くここにいるしかないよ」
「隠れてな」
「そうだね」
小田切君は二匹のその言葉に頷いた。
「じゃあ暫くここに引き篭もるか」
「研究所に行かずに」
「やり過ごすんだな?」
「うん、そうさせてもらうよ」
小田切君は言った。
「お給料は自然に口座に振り込まれるし」
金払いはやたらいい博士であった。
「そうさせてもらうか」
「食べ物とかは今のうちに買い込んで」
「やり過ごそうぜ」
「うん」
こうして小田切君と二匹は難を避けるつもりであったが。それは虚しい努力に終わることを彼等はこの時まだ知らなかった。不幸なことに。
第五十八話 完
2007・10・31
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