第五百五十話
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第五百五十話 トラックも
校外のコースは走り終えた、そしてだった。
美奈子は遂に学校に戻って来た、そのトラックに入ると。
「おい頑張れ!」
「妹も頑張れよ!」
クラスの男子生徒、もう自分達のマラソンを走り終えた彼等がグラウンドのトラックの外側から声援を送ってきていた。
「姉の方は今着いたぞ!」
「トップだ!」
順位も言われる。
「御前も頑張れ!」
「最後の最後までな!」
「そうjなの、華奈子はトップだったのね」
「あたしやったわよ」
華奈子も笑顔で美奈子の頭の中に言ってきた。
「最後の最後で残ってる力全部出してね」
「全部なの」
「そう、全部出してね」
それでだというのだ。
「抜いたわ、とはいってもね」
「いってもって?」
「同時だったから」
つまり単独トップではなかったというのだ。
「二人同時だったから」
「そうだったの」
「美奈子もこのままいったらね」
「二十番いけるかしら」
「いけるわ」
華奈子が明るい声で美奈子の脳裏に言った。
「絶対にね」
「そう、それじゃあ」
「最後の最後まで力を出してね」
そしてだというのだ。
「それで頑張ってね」
「何か順番よりも」
ここで美奈子もわかった、このことが。
「最後の最後まで力を出し尽くすことがなのね」
「大事だから頑張ってね」
「そういうことなのね」
「あたし実は今もう動けないけれど」
それでもだというのだ。40
「満足してるからね」
「力を出し尽くしたからね」
「美奈子もそうしてね」
「ええ、それじゃあ」
美奈子も明るい声で脳内で応えた、そうしてだった。
トラックを走り続ける、残された全ての力を出して。
周りはもう見てはいなかった。順位はどうでもよくなっていたのだ。
美奈子は前を見ていた、その速さは最早ダッシュだった、今自分に残されている力を最後の最後まで出していた。
ゴールも見えていなかった、美奈子の終わりは力を出し尽くしたその時になっていたのだ。
第五百五十話 完
2012・12・11
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