青葉時代・エピローグ
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涙を流している者も、心の中で泣いている者もいた。
里の、いや忍び達の中の英雄と呼ばれるに相応しい人物の死を悼んで、葬儀の話を聞いた誰もがその場に集まっていた。
粛々と儀式が進む中、一人の少女が不思議そうに首を傾げた。
「ねぇ、お母さん。火影様はどうして目をお覚ましにならないの? いつもだったら私達が傍にいったら喜んで笑って下さるのに」
「火影様はね、お亡くなりになられたのよ。お前も、お花を手向けていらっしゃい」
兎のぬいぐるみを抱いた少女はよくわからないままに頷く。
数年前に姉からもらった首に緑のリボンを巻いた兎を手に、綺麗な真っ白な花を受け取って横たわるその人の上へと花を添える。
微笑む様に瞼を閉じ、唇に薄く微笑を刷いた横顔はとても綺麗だった。
でも眠っているようなお姿よりも、普段の元気な姿を見てみたかった。
「火影様、お花です」
いつもだったら同じ事をすれば、この上もなく幸せそうに微笑んでお礼を言って下さるのに、火影様は眠ったままだ。
わけがわからなくて困った顔をすれば、木の葉の忍びを意味する額当をつけている人たちが自分の後ろに並んで、一人ずつ花を火影様の傍に渡していく。
「お兄ちゃん、火影様はどうして目を覚まされないの? 起こさないと、寝坊した! っていってまた大騒ぎなさるよ」
「そうだなぁ……。きっとそうなされるだろうなぁ」
顎の下に十文字の傷のある少年が顔を伏せ、その隣の少年が困ったように顔を歪める。
なんで泣きそうな顔をしているのだろう、と少女は不思議に思った。
「ミト様、泣いてるの?」
「そうね……。もう柱間様とお話しする事も、出来ないからね……」
灰鼠色の瞳を潤ませた、鮮やかな赤い髪の佳人が目元を押さえる。
この美しい人がそんなことをすれば、いつもだったら直ちに火影様が駆け寄ってきて大騒ぎしたのに。
「もうお話しできないの? どうして?」
「柱間様は……お亡くなりになられてしまったからよ」
少女は途方に暮れた眼差しで眠り続けているその人を見つめていた。
手の中の兎のぬいぐるみの首元のリボンが解けて、風に乗って飛んでいく。
――風に舞うリボンへと伸ばされた少女の指先は、空を切った。
一人の英雄の葬儀が行われた。
戦国の世に最強と謳われた千手一族の頭領にして、一国一里制度の発想者である彼の人物の名を千手柱間と言う。
敵も味方も柱間のことを最強の忍びとして讃え、忍びの頂点として一目を置かれていた彼の人の、その鮮やかな姿に憧れる者は後を絶たなかったと伝えられている。
しかしながら、その比類なき戦闘力を誇る木遁という唯一無二の忍術を扱いながらも、彼の人はあくまでも力ではなく、話し合いや融
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