第五百四十九話
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第五百四十九話 佳境が近付き
美奈子は走り続けていた、その中でだった。
華奈子が美奈子の頭の中にこう声をかけてきた。
「もうすぐよ」
「終わりよね」
「そう、もうすぐで終わりだから」
こう言ってきたのだ、魔法で美奈子の頭の中に。
「頑張ってね」
「ええ、ところで華奈子の方はどうなの?」
「あたしはそこそこよ」
「華奈子にとっては、よね」
「ええ、今目の前にトップランナーがいるわ」
つまりトップ集団にいるというのだ。
「二番目よ」
「あと一人ね」
「ちょっと。抜けない・・・・・いえ違うわね」
華奈子は言ってすぐに己の言葉を収めた。
「抜くのよね」
「そういうことよね」
「ええ、だから」
それでだというのだ。
「あたしも頑張るから」
「そうしてね。もうすぐなら」
それならと言う美奈子だった。
「華奈子も最後の最後まで」
「頑張るってことね」
「私も華奈子の背中見てるわよ」
美奈子にとっては、自分でも思っていることだが意外にもかなり先の集団のところに来ているのだ。それでだった。
華奈子の背中をはっきりと見える距離に置きながら走って彼女に言うのだ。
「近くにいるからね」
「抜かさせないわよ」
「そこまでは無理だから」
この辺りは元々の体力が違っていた、やはり華奈子の体力は凄い。
だが美奈子はその華奈子に言う。
「けれど私も最後まで走るからね」
「何番目指してるの?」
「二十番」
丁度それ位の順位である。
「それを目指すわ」
「そう。それじゃあね」
「お互いに頑張ろうね」
「そうしようね。これで走り終わったら」
それでだと言う華奈子だった。
「お家でお風呂に入ろうね」
「お風呂ね」
「そう、二人でね」
これが華奈子の提案だった。
「そうしようね」
「ええ、じゃあ」
頭の中で話す二人だった。マラソンはいよいよクライマックスだった。
第五百四十九話 完
2012・12・11
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