第五百四十四話
[8]前話 [2]次話
第五百四十四話 今田先生の知識
華奈子は自分にマラソンの走り方について教えてくれた今田先生のことを美奈子に話す。二人にとってはこれまではあくまで魔法の先生であり体育のことには関係がない筈だったが今はそのことについてだった。
「魔法でもそうだけれどスポーツでもね」
「徐々になの」
「そう、距離とかを徐々に増やしていけばね」
「問題なくできるのね」
「いきなり長い距離を走ったら駄目って言われたの」
「まずは短く。華奈子が私にそうしてくれたみたいに」
「そう、まずは一キロ位ね」
華奈子はそこからはじめたのだ。そして徐々にだったのだ。
「で、毎日走って少しずつ増やしていったでしょ」
「本当にね」
「だからよ。三キロもね」
「ううん、本当に三キロって遠いと思ったけれど」
「違ってきたでしょ」
「朝それだけ走ってたなんて」
美奈子にとっては本当に意外なことだった。
「そしてそれだと」
「走られるから。いつも通り頑張ってね」
「ええ」
今度は確かな顔で頷けた美奈子だった。
「そうするね。それにしても華奈子って」
「あたしがどうしたの?」
「魔法と音楽だけじゃなくて体育の才能もあるのね」
「ううん、頭使う様になったのは最近だから」
それまではただ体力と素早さに頼っていただけだったというのだ。
「先生にペース配分とか色々教えて貰ったの」
「野球で言うと昔ヤクルトにいた古田さんみたいなの?」
美奈子は少し古い、彼女達の年齢ではレトロな選手のことを話に出した。
「頭を使った緻密なスポーツ」
「できたらいいね、そういうの」232
華奈子自身も言う。
「きめ細かいプレイとかね」
「何か華奈子も変わってきたわね」
「美奈子もよ。これまでマラソンっていったら嫌な顔して最後の方にへとへとになって歩いてゴールだったじゃない」
「運動は苦手だから」
「それが変わったじゃない。それを考えたらね」
「私も変わったのね」
「うん。だからマラソンも最後の最後まで走って」
そしてだというのだ。
「気持ちよくゴールしようね」
「ええ、絶対に」
「皆でね」
そうしたゴールをするのは美奈子だけではないというのだ。
「クラウンの皆でね」
「最後の最後まで走って」
「それでゴールしようね」
本番前に笑顔で話した。その本番はいよいよだった。
第五百四十四話 完
2012・11・19
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ