第五百三十四話
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第五百三十四話 前を見る
赤音も美奈子に対して自分のマラソンへの考えを話した。
「後ろを見ないのよ」
「振り向かないのね」
「そう、絶対にね」
そうしなければならないというのだ。
「もっと言えば横も見ないで」
「それで走っていくのね」
「前を見るの」
赤音は前向きな口調で美奈子に告げた。
「とにかく前なの」
「後ろを振り向かないで」
「走るといいのよ」
「そういえば私って」
美奈子は赤音の言葉から自分のことを振り向いた。今は走っていないがそうしてみてこう言うのだった。
「マラソンしてるとどうしても」
「時々後ろを振り向くのね」
「そうしてしまうのよね」
少し困った顔で話す。
「ついついね」
「振り向いたらかえって駄目なのよ」
「注意がそこにいくから」
それでだとだ。美奈子もわかった。
「それでなのね」
「そう。だから気をつけてね」
「前なのね」
「足元も注意しないといけないけれど」
とにかく前だというのだ。
「前向きにって言われるけれどね」
「マラソンは特になのね」
「ええ。華奈子ちゃんだってそうじゃない」
赤音は華奈子の話もした。32
「前を向いて走ってるでしょ、いつも」
「そういえば華奈子って」
「でしょ?絶対に横も後ろも見ないからね」
「だから速いのね」
「余計にね」
ただでさえ速いがさらにだというのだ。
「だから美奈子ちゃんもね」
「前を見れば」
「それに気持ちが前向きになれば」
赤音は美奈子にさらに言う。
「それだけ完走できるじゃない」
「そうね。完走しないと話にならないから」
そもそもそのことすら美奈子にとっては不安なのだ。前向きになってそれで走られるならだと考えて言うのだった。
「絶対に後ろも横も振り向かないわ」
「その意気よ」
赤音が美奈子に言うのは意気だった。美奈子はこれも教えてもらったのである。こうしてまた一歩前に出た。
第五百三十四話 完
2012・10・17
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