第五百三十話
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第五百三十話 マラソンも
校内マラソンの時が近付いてきていた。だが。
美奈子は難しい顔になっていた。そのうえで華奈子にこう言うのである。
「私やっぱり」
「マラソンは嫌なの?」
「元々運動は得意じゃないけれど」
その中でも特にだというのだ。
「マラソンは特に」
「嫌いなのね」
「昔からいつも最下位だったから」
学年の女子でいつもだ。
「一年の時から今までね」
「それはそうだけれど」
「特に持久力がないから」
瞬発力も筋力もないが特になのだ。
「だからマラソンは」
「けれど。運動もね」
「楽しんで、よね」
「そう。楽しんでしようって決めたじゃない」
華奈子はあえて明るい顔になって美奈子に話す。その笑顔で美奈子を励まそうと考えていることは美奈子にもわかる。
それで華奈子の心遣いに感謝して笑顔になって言った。
「そうね。マラソンでもね」
「楽しくやってみようよ」
「マラソンでも楽しいお?」
「何なら実際にやってみる?」
「マラソンを?」
「そう。付き合うけれど」
華奈子はここでも笑顔だった。
「一緒に走ってみよう」
「何か悪いけれど」
「悪くないわよ。美奈子だっていつおあたしのお勉強に付き合ってくれるし」
自分が言いだしっぺだがそれでも付き合うというのだ。
「だからどう?」
「そこまで言ってくれるのならね」
美奈子は華奈子の心遣いを感じ取った。そのうえでの言葉だった。
「お願いするね」
「それじゃあね」
「マラソンも楽しいのね」38
「あたしは好きだけれどね」
華奈子はだというのだ。
「短距離走もだけれど」
「長くても短くてもなの」
「そう、好きだけれど」
「じゃあどうして華奈子がマラソンを好きなのか」
美奈子はその華奈子の言葉を反芻した。
「それを見つけてみるわね」
「その為にもね」
「うん、一緒にね」
二人で笑顔で話した。美奈子はマラソンの楽しさを見つけることにした、それを楽しむ華奈子と一緒に走ることによって。
第五百三十話 完
2012・10・2
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