第五十三話
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第五十三話 今田先生という人は
「何故わかったんですか!?」
小田切君はすぐに先生に尋ねた。
「秘密にしていたのに」
「今仰っていますけれど」
「いや、それでも」
言ってしまったがそれでも聞かずにはいられなかった。どうしてわかったのかそれそのもの自体が聞きたいのである。思えば実に不思議なことである。
「わかったことが」
「あの方はよく御存知ですので」
「といいますと」
にこりと笑って答える先生の言葉でわかってきた。
「博士と以前戦われたことが」
「そこまではいきませんが」
それは否定するが甚だ怪しいものである。
「お知り合いですから」
「そうでしたね」
言われてみれば何があるのかわからないのがあの博士だ。今田先生と知り合いでも不思議ではない。しかしそれでも実に驚くべき話である。
「そもそもお知り合いになられたのは」
「私が学生の頃ですけれど。あれは何時頃でしたでしょうか」
そういえばこの先生も一切が謎である。思えば謎まみれの人間の多い街である。小田切君も今そのことに気付くのであった。
「その頃からです。博士も御存知だと思いますよ」
「はあ」
「あの頃は恐山に封印されておられました」
「恐山に」
また随分な場所に封印されたものである。しかし封印とはいよいよ人間離れしている。
「三日で出て来られましたが」
「そうでしょうね」
これはすぐに予想がついた。
「宇宙空間からでも出て来る人ですから」
「そうですね」
「まあ博士と先生のことはほんの少しはわかりました」
これで話をとりあえずではあるが終わらせることにした。
「それでですね」
「はい」
「これからどうされるのですか?」
不意にという感じで先生に尋ねた。
「博士がまた帰って来られますけれど」
「私は何も」
何もしないと言う。
「何もですか」
「それはあの娘達がしてくれます」
穏やかな笑みで六人を見るのだった。観覧車の中ではしゃいでいる。
「ですから私は何も」
「あの娘達が」
「きっと博士と楽しくやってくれますよ」
「楽しくですか」
「はい」
何となくだが話は終わった。その頃日本にアンゴルモアどころではない恐怖の大王が降り立ったのであった。
第五十三話 完
2007・10・17
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