第五百二十二話
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第五百二十二話 ジップとハリーは
ジップとハリーは自分の部屋に戻って姉の葵から貰ったモーツァルトの現代語訳の歌詞を見てこう赤音に言った。
「クラシックって重いと思ってたけど」
「違うのね」
「そうだよね。軽やかっていうか」
「親しみやすい?」
「そうなのよね」
赤音自身もこう言う。
「演奏とかしてみてもね」
「そうだよね。軽やかだよね」
「何か楽しむ感じで」
「多分ベートーベンとかだと違うのよ」
あまりにも有名なドイツの作曲家だ。その人柄は頑固というより頑迷で癇癪持ち、自信家というより尊大で尚且つ気難しいという人物だった。
「演奏してもね」
「重いよね」
「それこそボリュームもある」
「真っ黒いステーキ?」
赤音はベートーベンの音楽をこう評した。
「それも分厚い」
「ちょっと聞くと美味しそうだけれど」
「そこは違うよね」
「あまり分厚いと食べにくいでしょ」
赤音はそのステーキに例えて自分の使い魔達に話す。
「それと一緒よ」
「ううん、しかもミディアムだよね」
「中身までよく焼けてる」
「そう。それに対してモーツァルトは」
音楽史どころか人類の歴史にその名を残す天才の音楽はというと。
「白いチョコレートかしら」
「食べやすいね」
「それもかなり」
「そう。そんな感じなのよ」
それがモーツァルトの音楽だというのだ。
「だから演奏していても楽しめる感じなのよ。だから余計に歌詞もね」
「歌いやすい方がいい」
「そうなるのね」
「そういうこと。クラウンの皆とお話してね」
それで至った結露は。
「この歌詞がいいってね」
「そう出たんだね」
「つまりは」
「そう。ベートーベンだと負担があるでしょうけれど」
それでもモーツァルトはだというのだ。
「軽やかにってね」
「うん、じゃあご主人もね」
「そうして演奏とコーラス楽しんでね」
「そうするね」
赤音はドラマーとして笑って言う。音楽は楽しんでこそということを実感していた。それはかなり楽しいことだった。
第五百二十二話 完
2012・9・2
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