第五百二十一話
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第五百二十一話 歌詞を見てみて
赤音は姉から受け取ったモーツァルトの歌の歌詞、現代語になったそれを見て満足した顔で大好きな姉に言った。
「有り難う」
「それでいいのよね」
「うん、凄くいいよ」
その満足した笑みでの言葉だった。
「これならね」
「歌えるわよね」
「昔の歌だとね」
それではだというのだ。赤音も。
「というか昔の歌詞だと」
「難しいわよね、やっぱり」
「演奏する分にはいいけれど」
赤音はドラムだ。ドラムで演奏する分にはだというのだ。
「けれどね。歌うのは」
「華奈子ちゃんと美奈子ちゃんよね」
「二人共昔の歌詞だと歌いにくいっていうのよ」
赤音は知らないが文語と口語がある。今の時代の歌の歌詞は口語なのだ。それに対して昔の歌詞、明治や大正、そして戦前にもまだあった文語が残る歌詞はというと。
「どうしてもね」
「ううん、そんなになの」
「勝手が違うからって。私達ってロックやポップスがメインだけれど」
「それにバラードよね」
「そうしたジャンルの音楽だからね」
それでだというのだ。
「あまりね」
「クラシックだけでも難しいわよね」
「アレンジ苦労してるわ。けれど」
華奈子と美奈子、実際に歌ヴォーカル二人はどうかというのだ。
「華奈子ちゃんと美奈子ちゃんはもっとだからね」
「歌わないといけないから」
「そう。余計に気にしてるみたい」
「赤音ちゃんも確か」
「コーラスはするわ」
クラウンではヴォーカル以外の四人も歌う。しかしそれはコーラスという形で行なわれる。そうなるのだ。
それでコーラスの立場からこう言う赤音だった。
「それであの昔の歌詞は」
「やっぱり歌いにくいわよね」
「ええ、実際に練習中やってみたけれど」
やってみれば一番わかる。そういうことだった。
「難しかったわ」
「でしょ?皆難しいって感じるから」
「やっぱり今の歌詞じゃないと駄目よね」
「そういう結論だったわよね。じゃあ」
「この歌詞でね」
「思う存分歌ってね」
姉として赤音ににこりとして告げた。
こうして赤音は自分の姉が特別に訳してくれた歌詞を皆のところに持って行く。これがまた一つの流れになるのだった。
第五百二十一話 完
2012・9・2
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