第五十二話
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第五十二話 小田切君の本音
「博士は嫌な方ですか?」
「それはないですね」
小田切君はそれについても正直に答える。
「無茶苦茶で破天荒な人ですけれど」
「そうですね。あの人は悪い方ではありません」
ただ単にとんでもない人間というだけである。ついでに言えば常識が完全になく理屈も法律もルールも一切無視するだけである。たったそれだけのことだ。
「ですから」
「性格に闇はないんですよ」
「ですね」
先生はその言葉ににこりと笑う。
「それは全く」
「あれで性格が悪かったらどうしようもないですよ」
かなりの酷評であった。
「いつも何をしてかすかわからないのに」
「一緒にいないと何をするか心配だと」
「一緒にいても何するかわかりませんけれどね」
そういう博士なのだ。
「迷惑千万で」
「ですか」
「そもそも何歳かわかりませんし」
少なくとも日露戦争の時に大日本帝国海軍と渡り合ったのはわかっている。他にも豊臣秀吉と真っ向から激突したとか阿部清明と死闘を繰り広げたとか聖徳太子に封印されそうになったとかスサノオノミコトに成敗されそうになったとかいう話がある。実は素性が滅茶苦茶不明な博士なのだ。大学も何回、幾つの大学でどれだけ博士号を持っているのか不明である。何処までも非常識な博士なのだ。
「訳わからない人です」
「私もあの方のことはよく知らないところがあります」
「あれっ、そういえば」
小田切君は今の先生の言葉に気付いた。
「先生はうちの博士御存知みたいですね」
「少しだけですが」
そう前置きして述べる。
「御会いしたこともあります」
「そうなんですか」
これまたわかる衝撃の事実であった。
「はい。楽しい方です」
「ううむ、博士は」
「博士は紳士ですよ」
先生はこうも述べる。
「それも御存知だとは思いますが」
「あれで服装にも気を使ってますしね」
白いタキシードに白エナメルの靴、黒いマントと服装はかなり異常であるが。それでもお洒落なのはお洒落なのだ。
「独特の価値観もありますし」
「ええ。それでですね」
「はい?」
「もう戻って来られますね」
「えっ!?」
秘密にしていたのに。何故か見破られた。
「何故それを」
「すぐにわかりました」
どうしてそれがわかったのか。小田切君の謎がまた増えた。
第五十二話 完
2007・10・10
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